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アジア通信
第7号 2010年1月29日発行
目次
1
「下水道維持管理技術者研修」実施レポート(ANMC21研修事業の紹介)
 東京で行った「下水道維持管理技術者研修」の紹介と、バンコクの研修生からの研修の成果についてのレポートをお伝えします。
2
「アジア舞台芸術祭」が開催されました!(ANMC21共同事業の紹介)
 ANMC21共同事業のひとつ「アジア舞台芸術祭」が東京で開催されましたのでご紹介します。「タンロン水上人形劇団」(ハノイ)による人形劇やアジアの食を題材にした料理演劇(アジアンキッチン)などが上演されました。
3
大都市の先進的な取組
(1)FROM東京 ~第2回IWAアジア太平洋地域若手水専門家会議~
 北京で第2回IWAアジア太平洋地域若手水専門家会議が開催されました。東京都水道局からも若手職員が参加、都の推奨する、直結給水システムとその環境負荷の抑制効果について発表を行いました。
(2)FROMハノイ ~「在ベトナム日本国大使館で取り組む『交流外交』」~
 2010年は、ハノイにとって建都1000年目にあたる記念の年です。そこで今回は、ハノイの在ベトナム日本国大使館に勤務する栗林康孝さんに、ハノイの大使館での取り組みについて紹介してもらいます。
4
東京で学ぶ留学生
 今回は、「高度医療開発に向けたプロテオミクス基盤技術の創生」を行っている中国からの留学生陳臣さん、台湾からの留学生楊淳竣さん、そして担当教授の礒辺先生にお話を伺いました。
ANMC21研修事業の紹介
 ANMC21では、会員都市の行政職員や専門家を対象に、専門分野ごとに様々な研修プログラムを設けています。今回は、2009年11月30日~12月4日にかけて行われた「下水道維持管理技術者研修」を紹介します。

「下水道維持管理技術者研修」(実施レポート)
 この研修は、アジア大都市の下水道事業従事者を対象に、講義及び施設見学を通じて、東京都の下水道維持管理分野における先進的な取組みを伝えることで、アジア全体の技術水準の向上を図ることを目的としています。
 今回の研修には、バンコクから2名の研修生が参加しました。

森ヶ崎水再生センターの視察
 研修初日は、本研修が都市間における情報発信の場となるよう、バンコクの下水道事情について、研修生によるプレゼンテーションを行いました。
 現在、バンコクでは、都内8施設目となる下水処理場の建設を進めています。この処理場は、バンコクで初めて公園内に整備される処理場であり、ここで処理した水を園内にある池の補充用水として利用する予定です。
 2人の研修生は、環境に配慮した下水処理水の再利用について学ぶため、この研修に参加しました。

 今回の研修では、研修生の参加目的を踏まえ、下水道局で実施している再生水事業に関する講義及び施設見学を実施しました。
 また、この他、東京都の下水道の歴史、財政、水再生センター及び管きょの維持管理、水処理や汚泥処理における最新技術に関する講義及び施設見学を実施しました。

 5日間という短い期間でしたが、研修期間を通じて、白熱した意見交換が終始行われ、国を超えた技術者同士のつながりを垣間見ることができ、研修生にとっても満足のいく研修となりました。

Report バンコク都 排水・下水道局 衛生科学者 ソパ・ブラクライさん

ソパ・ブラクライさん
平地にあるバンコクにはたくさんの水路があります。遠い昔、水路を交通手段として利用していたバンコクの人たちは、川や水路のそばに家を建てることを好みました。現在では、都市化が進み、多くのビルが建てられ、人口は大きく拡大しました。そして、環境問題が生まれており、汚水問題はそのひとつです。一般家庭や商業ビルから流れ込む汚水 、そしてごみで、水路が汚染されています。この問題に対処するのが、バンコク都排水・下水局の仕事です。同局はこれまでに、汚水処理場の建築を進めてまいりました。バンコクには現在、7つの汚水処理工場が稼動中で、あわせて1日99万2千立方メートル(バンコクで排出される汚水の40%に相当)の汚水を処理しています。そのほか、建築中の汚水処理場が1つ、建築に向けて検討中のものが4つあります。一方で、汚水問題に対する民の関心は依然として低いため、市民教育を強化する必要があります。そこで、小学校の授業で汚水問題を取り上げる、また市民にパンフレットを配るなどの取り組みを始めました。

東京とバンコクを比較するのは難しいですが、東京都下水道局との経験の交換の場はとても有用です。研修で得た知識を自分の仕事に活用できそうなアイデアが、いくつかあります。特に、処理水を緑地整備や高層ビルでの再利用にまわす、また処理水の副生成物を利用して発電をするなど、東京都の高度な技術が参考になりました。



ANMC21共同事業の紹介
ANMC21共同事業のひとつ「アジア舞台芸術祭」が東京で開催されましたのでご紹介します。

「アジア舞台芸術祭」
 アジア大都市ネットワーク21の共同事業のひとつである「アジア舞台芸術祭」が、2009年11月26日から29日までの間、池袋の東京芸術劇場で開催されました。

地下広場に出現した巨大な「亜細亜城」
 この「アジア舞台芸術祭」は、アジアの舞台芸術を通じて、相互理解と文化交流を促進し、優れた人材や芸術作品を発掘することを目的としたものですが、訪れる観客にとっては、アジアの文化に触れ、楽しむことのできる貴重な機会ともなっています。
 今回は、参加各都市の街路を再現した「亜細亜城」を主な舞台として、国際共同制作された作品や、アジアの食を題材にした料理演劇(アジアンキッチン)などが上演されました。
 国際共同制作作品は、参加各都市の劇団と東京から参加するアーティストによるコラボレーション作品で、うちハノイからは、国際的な評価が高い「タンロン水上人形劇団」が参加しました。

水上人形劇「竜の踊り」
 水上人形劇は、その名の通り、水面上で行われる人形劇のことですが、リズムのある民謡の調べにのせて、簾(すだれ)の後ろから、水上の人形を遠隔操作します。テンポの早さとコミカルな人形の動きが特徴となっており、観光客などに大変人気のある人形劇です。
 今回は、定番の演目である「竜の踊り」や「不死鳥(鳳凰)の舞」のほか、日本の奉納相撲を題材としたオリジナル作品も披露されました。さらに、舞台の後半では、実物大の河童が水中から突如あらわれ、水面上の人形と“競演”をするなど、伝統演劇と現代演劇の融合するシーンも織り込まれていました。
 また、台北、ソウルの劇団も、国際共同製作作品を公演しており、連日多くの観客を魅了していました。
もう一つ、アジアンキッチンを紹介します。

アジアンキッチン・ネパール編?
 これは、アジア各都市の料理を題材にした演劇を、都内に在住する当該都市の出身者が演じるというもので、うちインドのデリー編では、池袋近郊でインド料理店を経営するシャルマ氏が登場しました。
 このシャルマ氏、実はインドではなくネパールの出身で、今回紹介された料理もネパールの代表料理の「モモ」という予想外な展開となりましたが、相方の日本人女性との日本の文化などに関するかけ合いが、演出されているとは思えない自然な流れで進んでいく中で、在住15年のシャルマ氏の優れた日本語能力が随所に垣間見えるなど、いつしか会場は笑いと賞賛と料理の芳香で包まれるようになっていました。
 このアジアンキッチンには、計7つの都市から参加がありました。

屋台村
 この他にも、隣接する公園では、アジア各都市の料理を提供する屋台村が設置されたほか、ヘブンアーティストによる大道芸やラリーポイントを各都市に見立てたスタンプラリーが催されるなど、会場の内外で、アジアの文化・芸術が、様々な方法でPRされていました。
 以上、今回ご紹介できたものはごく一部ではありますが、訪れた観客は「観る」「食べる」「楽しむ」を通じて、アジアの舞台芸術や文化の魅力を十分に堪能できたのではないでしょうか。
大都市の先進的な取組
 ANMC21会員都市が行う、先進的な取組を紹介していきます。

(1)FROM東京 ~「第2回IWAアジア太平洋地域若手水専門家会議」~

会場で発表を行う髙﨑主任
 2009年11月4日(水)から6日(金)まで、北京で第2回IWAアジア太平洋地域若手水専門家会議が開催されました。本会議は、年齢35歳以下の若手水道技術者や研究者の育成及び連携を目的に、IWA(国際水協会*)が昨年から開催している国際会議です(昨年は韓国 光州市で開催)。
 今回は、中国、韓国、台湾、シンガポール等アジア各国から約120名の参加があり、将来の水道事業を担う若手専門家の間で、活発な議論や交流が行われました。東京都水道局からは、多摩水道改革推進本部の髙﨑和良主任が参加し、口頭発表を行いました。

テクニカルツアー(清河汚水処理場)
 髙﨑主任は、「貯水槽水道の直結給水への切替えにおけるCO削減効果の考察」について発表し、東京都水道局が推奨している、直結給水化によるCO排出量の削減予測について説明しました。直接給水化とは、浄水場でつくられたおいしい水をそのまま蛇口まで届けるため、貯水槽を経由せずに、配管から直接ビルやマンションなどの各階に給水する方式の普及・促進をはかる施策のことです。今回の発表は、貯水槽で使用する給水ポンプの消費電力に着目してCO原単位を算出し、貯水槽水道から直結給水に切り替えることにより削減される電力量をもとに、抑制される温室効果ガスの量を試算したことについて説明したものです。
 髙﨑主任によると、今回は事業体からの参加が少なかったため、東京都の発表に注目が集まり、会場からは、今回のCO排出量削減予測の対象となっている直結給水の種類を尋ねる質問が出されるなど、水道分野における環境負荷の抑制に向けた取り組みに対する関心の高さが伺えたとのことでした。
 次回はシンガポールで開催されることとなっており、引き続き東京都水道局の若手職員による論文の応募を予定しています。
*IWAとは、水に関わるあらゆる分野の調査研究と実務を結ぶ国際的ネットワークです。 科学・研究・技術・実務分野に携わる専門家たちが参加しており、世界130カ国に、1万人の個人会員と400の団体会員がいます。(IWAホームページより

(2)FROMハノイ ~「在ベトナム日本国大使館で取り組む『交流外交』」~ 
2010年は、ハノイにとって建都1000年目にあたる記念の年です。そこで今回は、東京都庁から外務省に派遣され、ハノイの在ベトナム日本国大使館に勤務する栗林康孝さんに、ハノイの大使館での取り組みについて紹介してもらいます。


ハノイで開催した「和太鼓+ロボット公演」
 私は、大使館で自治体交流事業、文化事業及び招聘事業を担当しています。
 今年(2010年)は、李朝を樹立した将軍李太祖が、1010年に首都を華閭(ホアルー)から昇龍(タンロン、現ハノイ)に移して以来、ちょうど千年目にあたる「ハノイ建都1000年記念」にあたり、ハノイではカーニバルやフェスティバルなど様々なイベントが予定されています。自治体交流事業としても、日本の首都東京の他、ハノイの姉妹都市福岡県や、同じく遷都1300年の記念すべき年を迎える奈良県などとの自治体レベルでの交流が活発になっていきます。


JENESYSで訪日したベトナムの生徒達
 また、昨年(2009年)は、近年、急速に関係が深まっている日本とメコン地域諸国(カンボジア、タイ、ベトナム、ミャンマー、ラオス)との間で、更なる交流の拡大を実現することを目指して設定された「日メコン交流年」でした。数々の文化交流イベントが行われ、私も文化事業担当として、こうしたイベントの実施・調整をおこなってきました。実施にあたり、民間等の様々な団体の協力をいただきました。日本の文化外交は、こうした様々な人々の文化交流に対する熱意により支えられていることを実感しました。
 そのほか、ベトナムの人々を日本に招待する招聘事業も行っています。中でも目玉になっているのが、21世紀東アジア青少年大交流計画(JENESYSプログラム)で、ベトナムからも毎年400人近くの青少年が日本に招待され、学校交流やホームステイなどを行っています。余談ですが、昨年、ベトナムからの参加者の女の子が日本で新型インフルエンザを発症し、重症化したことから緊急入院する事態となりました。幸い、この参加者は無事回復し、日本での治療に感謝してミドルネームをNHAT(ベトナム語で日本)に改名したと聞いております。
 これら「交流外交」ともいうべき活動は、対日イメージの向上、親日家の増加等の観点からも欠かせないものです。
 現在、ハノイでは、建都1000年記念の垂れ幕が市中に設置されたり、建都1000年のウエブサイトhttp://www.1000namthanglonghanoi.vn/index.php (ベトナム語のみ)が開設されたりと、雰囲気も盛り上がりを見せています。こうした中で今後も日・ベトナム友好のため、日々努力していきたいと思います。

東京で学ぶ留学生
 東京都では、首都大学東京においてアジアの各都市から留学生を受け入れ、都市問題の解決やアジアの発展に結びつく高度先端的な研究の推進を図っています。
 今回は、「高度医療開発に向けたプロテオミクス基盤技術の創生」を行っている中国からの留学生陳臣さん、台湾からの留学生楊淳竣さん、そして担当教授の礒辺先生にお話を伺いました。
●プロテオミクスとは: 人間の細胞や組織が作り出すタンパク質(プロテイン)の構造や機能の解明をめざす研究のこと
高度医療開発に向けたプロテオミクス基盤技術の創生
~がんなどの疾病の早期診断と効果的な医薬品開発に向けて~
研究チーム
首都大学東京大学院理工学研究科  礒辺俊明・田岡万悟・伊藤 隆・三島正規
首都大学東京 戦略研究センター  甲斐荘正恒・池 晙求

寄 稿 首都大学東京大学院理工学研究科 礒辺俊明教授

 高齢化社会における医療の問題は、首都東京をはじめ欧米やアジアの大都市にも共通する大きな社会問題として早急な解決が求められています。そこで注目されるのが、ガンをはじめとするさまざまな疾病を早期に診断できるバイオマーカー(注:例えばガンの細胞だけが作り出すタンパク質や糖などの物質で、診断の指標として使うもの)を発見し、効果的な治療を実現する先端的な高度医療技術の開発です。疾病の予防法や新規の医薬品開発を含むこうした技術の開発は、高齢化社会の医療費全体の削減をもたらし、都民が安心して健康に暮らせる生活を保障する社会的基盤として重要です。
 この研究では、本学が東京都立大学の時代から50年以上にわたって培ってきたタンパク質研究(プロテオミクス)の資産と豊かな人材を結集することで、バイオマーカー探索のための先端技術を開発するとともに、アジアを含む国際的なプロテオミクスの中核的な研究拠点形成を目指しています。また、こうした環境の中にアジアからの留学生を受け入れ、21世紀のアジアを担う優秀な人材の育成を目指しています。

 本研究は、首都大学東京の理工学研究科と3年前に学内に新設された戦略研究センターに所属する6名の教員の共同研究によって進められています。この中で、礒辺と田岡は質量分析法と呼ばれる「ゲノム科学」の最先端技術によって、正常な組織には存在しない、ガンの組織や細胞だけが作り出す超微量のタンパク質(バイオマーカー)を探し出す方法の開発を目標としています。
 甲斐荘、伊藤、三島、池は、いずれも核磁気共鳴法(NMR法)と呼ばれるタンパク質の構造解析法の専門家で、バイオマーカーとして見出されたタンパク質や病気の原因となるタンパク質の構造と機能(働き)の関係や、医薬品候補化合物などとの反応を詳しく解析する方法の開発を目指しています。
 特に、甲斐荘、池チームは「SAIL-法」と呼ばれる斬新なタンパク質解析技術の開発者として、また伊藤、三島チームは細胞の中に存在するタンパク質を直接観察できる「in-cell NMR法」の開発者として国際的に知られています。本研究を分担する6名の教員は、いずれもプロテオミクスの分野で多くの実績をもち、その研究成果は「Nature」などの著名な学術誌に取り上げられています。また、文部科学省などが提供する大型の競争的研究資金を長期にわたって獲得することで、国際的な最先端に位置する研究活動を続けています。

 本研究の開始にあたる平成21年度には、アジアから2名の留学生を受け入れました。楊さんは、2004年に台湾で最も著名な国立清華大学の生命科学科を卒業後、2006年には修士号を習得し、2008年1月より台湾のアカデミアシニカ (台湾中央研究院)のゲノム研究センター内にある高磁場NMRセンターで研究助手を務めていた方です。楊さんは「プロテオミクス」の分野の中でも、特にNMR法によるタンパク質の立体構造解析やタンパク質と薬物との相互作用を解析する研究で実績があります。
 陳さんは中国では最高レベルの大学である復旦大学医学部(上海)の卒業で、医師として華山病院で修士課程を修了した方です。陳さんの専門は外科で、特に内視鏡などを使ったマイクロサージャリー(注:指の再接合や切れた神経の縫合などを行う再生手術)で多くの臨床経験を持っています。タンパク質研究の経験は多くありませんが、ガンを診断するためのプロテオミクス研究に強い関心をもっており、本学への留学を希望していました。本研究では、ガンの診断などの医科学の領域で成果をあげることを大きな目標の1つとしていますので、臨床経験のある医師を留学生として受け入れ、さらには日本のガン研究の中心である国立がんセンター研究所と連携大学院協定を締結することで、本学とがんセンター研究所が協力して本研究の推進と留学生の教育を計ることにしています。

 本研究は5年間の期限となっていますが、それぞれの教員が分担する研究を効率よく推進することで、医療に関する首都東京の課題解決に向けた成果をあげるとともに、次世代を担うアジアの人材育成に貢献できるよう尽力するつもりです。また、この機会を利用して、アジア人材育成基金によって首都大学東京に留学している多くの留学生との交流を深めたいと思っています。
左から陳さん、礒辺先生、楊さん

Interview 中国からの留学生 陳さん

—中国では外科の臨床医として手術も多くされていたようですが、日本で研究活動を行おうと思ったきっかけはなんですか?
 自分の専門では、神経細胞の再生が課題です。人間の神経細胞は成長がとても遅く、再生が難しいのですが、神経の再生が早くできれば、多くの問題が解決できます。そのためには分子レベルの研究が必要です。一方、腫瘍(がん)細胞は大変早く成長するので、この分野の基礎研究をすることにより、将来的には神経系にも適用できないかと考えています。その点、日本ではプロテオミクス分野の研究が進んでいますので、ぜひ日本に来て勉強したいと考えました。将来は臨床・研究の両分野の経験を生かして活動していきたいと考えています。

—東京での生活はどうですか?
 以前いた上海に比べて、食べ物の価格は5倍くらいします。でもほかの面に関してはそれほどかわりません。家賃は上海より安いところもあります。
 日本で勉強・研究するには、日本語の勉強がとても大切です。その点、首都大は、無料の日本語コースなどがあって良いと思います。自分も来日直後は月曜日の夜に受講していました。最近は研究が忙しくなってきてあまり参加できていないのですが・・。

—でも、来日5ヶ月にしてすでに日本語がお上手ですね。これから東京に留学を考える人へのメッセージをお願いします。
 研究者にとって、国際的な交流はとても重要です。東京は、先進的な国際都市なので、日本人だけでなくいろいろな国の人々と会う機会があり、国際的な人脈を広げるにはチャンスですし、見るものも学ぶこともいろいろあります。コミュニケーションに関しては、多少語学の問題があるにせよ、ハート(心)があれば通じるものです。自分は一人っ子ですが、両親の理解もあり、来日しました。インターネットが発達しているので、中国の家族とも交流できますし、首都大に来ている中国の友人もいます。さびしいことはないです。

—中国のご両親が東京へ来たら、どこに行きますか?
 街路の美しい銀座と、先日行った紅葉の高尾山がとてもよかったのでもう一度行きたいです。


Interview 台湾からの留学生 楊さん

—首都大学東京にいらしたきっかけは何ですか?
 台湾は小さな島国なので、研究環境には限りがあります。その点、生物医学分野でのレベルが高い日本にきて研究をしたいと思っていました。また、元上司の薦めもあり、タンパク質研究分野では日本でトップレベルであり、かつ著名な先生達がいて、研究設備も整っている首都大を希望しました。現在自分の属するチームの甲斐荘先生は、2004年に台湾のアカデミアシニカで講演されており、それを聴講したこともあります。

—現在の研究環境は期待したとおりでしたか?
 現在、タンパク質の構造と機能を調べ、病気の原因となるタンパク質の働きを抑える方法を研究していますが、首都大のプロテオミクス分野の研究環境は素晴らしいと思います。アカデミアシニカでは、研究機材をほかの研究室と共同利用しなくてはならず、待ち時間が発生したりしていましたが、首都大では最先端の専用の機器があるため、自由に研究することができます。

—普段の生活を教えてください。
 基本的には研究漬けの毎日ですが、週末は近所のデパートでショッピングしたり、電気製品が好きなので、大型電気店で新製品のチェックをしたりすることもあります。「オタク」かもしれませんね。また、首都大のアジア人材育成基金による奨学生には、レジデント・アドバイザー制があります。留学生が住む団地内に大学の先生が一人住んで、ごみの捨て方やインターネットの接続の仕方など、生活面のこまごまとした相談に乗ってくれて助かっています。その先生と飲みにいったりすることもあります。

—首都大学東京で研究を終えられた後の目標を教えてください。
 機会があれば日本で研究活動を続けたいです。たとえば独立行政法人理化学研究所に勤務できたらいいなと思っています。でも、そのためにはもう少し日本語を勉強しないといけませんね。日本語は首都大の毎週水曜日夜1時間半のコースに参加していますが、まだまだ「幼稚園レベル」なんです。
ご結婚おめでとうございます!
—最近ご結婚されたそうですね。
 年末に台湾で結婚式をしました。1月からは妻も来日して、一緒に暮らしています。住居探しも大学に協力してもらって、十分な環境です。自分の趣味は登山なので、高尾山にも行ってみたいですし、妻と箱根にも行きたいです。

 留学生のお二人とも、大変優秀な方で、将来を嘱望される貴重な人材です。日本での研究を実りあるものにしていただきたいと思います。