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アジア通信
危機管理特別号 2011年9月22日発行
復興を目指して 〜東京の状況と取組〜

 巨大地震とその直後に発生した大津波は、磐石であると思われていた備えを遥かに凌駕し、日本列島の東北地方を中心に2万人を越える尊い生命が失われました。幸いにも、この震災による東京都の被害は比較的小さいものでした。しかし、地震発生当日には鉄道が全線停止したため、10万人近くが都心から帰宅できず、公共施設やホテルなどで夜を明かしました。また、地震発生後の数週間、原子力発電所の事故に伴い放出された放射性物質が東京にも及び、浄水場の水道水から乳幼児の摂取基準以上の放射性物質が検出されました。同時に、原子力発電所の停止による計画停電により、都民生活に様々な支障を来しました。

 それでも東京は、これまでに培った危機管理能力を発揮し、速やかに首都機能を回復することができました。公共交通機関は1週間程度で復旧し、水道水・大気の放射線量とも震災以前と同程度です。本年の夏は例年より暑い日が続きましたが、官民挙げての節電対策実施により、大規模停電を起こすことなく安定した生活を維持することができました。現在、東京は首都としての責務を果たすべく、東北地方からの被災者の受入れや被災地支援等、復興に向けた最大限の努力を行っています。

 これらの教訓を踏まえ、毎年ANMC21加盟各都市の緊急隊が参加をしている東京都の総合防災訓練(本年は10月に実施予定)では、防災力を向上するための新たな訓練項目を盛り込み、従来よりも実践的な訓練にする予定です。

 東京都では震災対応について、具体的には、以下の取組を行っています。

<放射能測定体制の強化と都民への正確な情報提供>
 原子力発電所の事故による都内での影響を調査し、都民の安心・安全を確保するために、水・大気・農水産物の放射線検査を行い、ホームページにおいて結果を公表しています。特に、水と大気については、毎日調査を実施し、翌日には結果を報告しています。
 水道水と大気は、3月の数日間、通常より高い放射性物質が検出されましたが、その後数値は下がり、現在は震災以前と同程度の値となっています。また、市場に出回る都内産の農水産物からは、国の基準を上回る値は検出されておりません。

<節電対策>
 今夏の電力危機を乗り切るとともに、過度の電力依存社会からの脱却をめざし、実践的な対策に取り組んでいます。
 大口の電気利用者(法人)に対しては、テナントビルなどに専門家を派遣し、節電アドバイスを実施しています。また個人に対しては、都内100万世帯を対象に、3,000人の節電アドバイザーが具体的な省エネ生活の手法を紹介する施策を行っています。また、都庁舎など都の施設において、サマータイムの導入による出勤時間の分散化、照明・エレベータの1/2休止等の対応を実施しています。その結果、現在のところ目標としている消費電力25%削減が実現できています。

<被災地へ向けた支援活動>
 被災者への支援については、都職員やボランティア等の被災地への派遣(人的支援)、都民等からの義援金や支援物資の受付及び被災地への物資提供(物的支援)、都内への被災者の受入れを行っています。以下に、2011年8月22日時点での実績を示します。

人的支援:
広域緊急援助隊(15,858名)、緊急消防援助隊(3,283名)、医療等支援(医師・看護師・薬剤師等:1,885名)、復旧・復興支援等(被災地避難所運営支援者・水道/下水道技術者:3,096名)など
物的支援:
毛布(166,360枚)・食材(361,620食)・飲料水(10,000本)等の救援物資の搬送など
被災者の受入:
都の所有するスポーツ施設(東京武道館282名・味の素スタジアム181名等)、民間事業者が所有する施設(解体を予定していた旧グランドプリンスホテル赤坂788名を活用)、都や国が保有する住宅(都営住宅・東京都職員住宅・国家公務員宿舎等3,514名)における受入など