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アジア通信
危機管理特別号 2011年9月22日発行
東京都職員被災地へ

(2)ライフライン復旧業務
REPORT:水道局多摩水道改革推進本部 八王子給水事務所長 前川 浩さん

5:30 宿泊先から応急給水活動へ出発

被災地へ 〜仙台市へ支援部隊を派遣〜
 私は、2011年3月26日から4月1日まで、仙台市水道局震災復旧支援第三次派遣の隊長として、被災地の支援活動を行いました。
 東京都は、仙台市と災害時相互応援協定を結んでいます。3月11日の地震発生後は直ちに、仙台市に向け先遣調査隊を派遣し、同時に仙台市水道局に対する支援体制を整えました。東京都からの派遣部隊として選抜されたのは、若手事務系職員と、技術系職員。1週間交代で一次隊、二次隊、三次隊が仙台市水道局の復旧支援を行いました。
 若手の事務系職員は、応急給水活動に従事しました。断水が続いている地域に対し、朝8時から夜7時までの給水を実施。朝5時に起床、宿に帰るのは夜8時というスケジュールでした。土砂崩れで水道管の復旧が難しい地区での給水作業の際は、不在者宅に対し給水袋と詳細を記した手紙を置いてきました。これに対しては、仙台市の職員からきめの細かい配慮であると評価されました。若手職員が、このような活動に従事できたことは、意義深いことでした。

深夜に及ぶ応急復旧活動の様子

 技術系の職員は応急復旧作業に従事しました。仙台市国見浄水場を拠点に錦ケ丘地区の通水、漏水点検を実施しました。この辺りは仙台駅から西へ10km、1,520世帯、人口3,340人の地域です。発災後16日が過ぎ、住民からは水道復旧が切望されていました。応急復旧班の職員は技術系のベテラン職員。配水施設維持管理の精鋭です。東京水道の現場で培った実力を以って26日の早朝から深夜に及ぶ一気呵成の作業を行い、27日の朝には水道が使える状態にしました。これほどの数の制水弁や消火栓の点検は初めてだと言いながらも、小雪が舞う中で夕食も取らずに排水作業を続けている職員達の姿は頼もしいものでした。

対策本部の活動 〜気仙沼市の状況調査〜
 派遣期間中、私は仙台市幹部職員で構成される水道災害対策本部会議を傍聴しました。ここでは浄水場の稼働状況や現在の断水状況、主要管路の通水予定、応急給水車の配置場所台数等についての報告がなされます。また、日本水道協会(日水協)が事務局である応援活動連絡調整会議にも出席しました。日水協は、日本全国に地方支部があり、水道が直面する重要かつ緊急な課題に対し、各支部相互に協力しながら問題解決を行う社団法人です。今回の大震災は被害地域が東北全域に及んでおり、日水協は、全国を挙げた支援体制で被災地の復旧支援に臨んでいました。この会議において、東京都は日水協から、今回被害が大きかった気仙沼市の状況調査の要請を受けました。そして、3月29日、私たちは気仙沼市へ調査に向かいました。

 気仙沼市の状況は、市内への給水の見通しの立った仙台市とは大きく状況が異なりました。市街地の3分の1は冠水し、湾の入口にあった野外タンクから流失した油に引火し湾内が延焼しました。津波発生時は作業車を避難させるのが精一杯で、他はことごとく流されました。気仙沼市ガス水道部庁舎での復旧活動は全く不可能で、山間部にある新月(しんげつ)浄水場を復旧活動の拠点としていました。

本吉水道事務所の水道展示室

 新月浄水場で気仙沼市水道の被害状況の説明を受け気仙沼市の職員と本吉水道事務所に向かいました。新月浄水場から本吉水道管理事務所へ向かう国道の両側は壊滅状態。無数の瓦礫、ひっくり返った橋台、線路が見当たらない気仙沼鉄道など、津波の爪痕は凄まじいものでした。本吉地区の水道管理事務所は高さ10m以上の大津波に襲われました。残っているのは庁舎の骨格と浅井戸。そして、職員1名の方が行方不明になっていました。2200戸が断水しており、給水再開は5月上旬を目標にしていました。「この辺は、風光明媚な海岸線が自慢の景勝地だったが・・・・。」残骸と化した本吉水道管理事務所での所長の話に、言葉がありませんでした。先の見えない状況の中、気仙沼市の職員はただ黙々と働いているという状況でした。

 浅井戸の状況調査に立ち会った結果、地下に溜まった海水を汲み出し、ポンプの排水清掃をすれば地下水の使用は可能であることがわかりました。電気の復旧の見通しは立っていませんでしたが、ディーゼル発電機と仮設送水ポンプで浄水場へ送水できることを確認し、調査を終えました。


■おわりに
今回、震災は広範囲に及んだにもかかわらず、速やかな支援体制が取られました。それは過去の震災での教訓を活かし、日水協を中心とする全国の水道事業者間の支援方針が確立されていたことや、大都市間の相互支援協定による合同訓練の成果だと考えます。都を含め各都市事業体の職員達の復旧に向ける強い使命感と情熱は、今後の復興の礎の一部になるに違いないと確信しています。

<その後の支援状況>
 水道局では被災地への支援として、3月17日から8月3日まで宮城県等に対し、り災証明書発行事務補助や都内避難者の受入施設での物資配布の支援業務に、延べ400名の職員を派遣しました。
 長期支援として8月1日から2012年年3月末まで岩手県、福島県、仙台市に8名の職員を派遣していきます。