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アジア通信
第17号 2011年11月30日発行
アジア大都市ネットワーク21研修事業の紹介

 アジア大都市ネットワーク21では、会員都市の行政職員や専門家を対象に、専門分野ごとに様々な研修プログラムを設けています。今回は、2011年7月12日〜7月15日に行われた「公共交通機関総合計画の策定支援研修」を紹介します。

都内駅前再開発地を視察 〜公共交通機関総合計画の策定支援研修を実施しました〜

 この研修では、東京都が、アジア大都市の公共交通機関総合計画にかかわる実務担当者を対象に、公共交通機関の総合的な計画策定や事業化方策について講義・現場視察を行います。また、各都市が公共交通に関する現状や課題等のプレゼンテーションを行うことで、参加都市と東京都が公共交通機関の整備を行う際の情報交換を行い、今後の計画策定に活かすものです。今回の研修には、昨年に引き続きジャカルタ特別市、台北市から応募があり、各都市3名、計6名の研修生が参加しました。
 各都市の公共交通の現状ですが、ジャカルタ市は経済の急速な拡大・発展に伴う交通渋滞の緩和が喫緊の課題となっています。解決策として、バス専用道の充実や有料高速道路の発展などに加え、近く都市高速鉄道(ジャカルタ初となる地下鉄を含む)の導入が計画されています。また、台北市はバスや地下鉄が発達して公共交通の要となっており、さらなる拡張と相互乗り換えの簡便化などが図られています。その他、公共交通の一層の利便性向上と環境対策のため、バスのバリアフリー化やハイブリッド導入、貸し自転車の促進などが進められています。

東京臨海高速鉄道株式会社を視察

 今回の研修では、初日に東京都の施策等に関する講義を行い、2日目は主に鉄道関連事業や再開発地の視察、3日目にバスロータリー整備現場の視察と各都市によるプレゼンテーションと討議、最終日の4日目に、各都市の都市整備に関する情報交換を行いました。この記事では、2日目の鉄道関係の視察の様子を紹介します。
 最初に訪れたりんかい線(東京臨海高速鉄道株式会社)は、平成3年に設立された、都内では比較的新しい鉄道会社で、東京都が資本金の90%を出資している第3セクターです。これから地下鉄を導入するジャカルタ特別市の参加者からは、乗車人員の動向や関連事業収入についてなど、経営に関する具体的な質問が寄せられました。


汐留地区地下一体構造物

 次に、汐留土地区画整理事業の現場を視察しました。この土地は、貨物駅跡地を商業・文化等の複合施設へと再開発が進められている土地です。汐留は新橋−銀座エリアに隣接する都内随一の商業地に位置し、主要な道路や地下鉄・ゆりかもめ等複数の公共交通システムが交差する場所ですが、各交通網が円滑に機能するように、地下を3層構造にし、地下最下階に地下鉄、中階に車道、上階に歩道、さらに地上にゆりかもめを整備するという、「地下一体構造物」として整備されている点が特徴です(添付の図を参照)。ここではゆりかもめと地下上層の歩道を一度に見られる場所から視察しました。

 最後は建設中の東京スカイツリーと、その一帯に整備される商業・文化複合施設、地下鉄等公共交通網の整備計画について説明を受けました。634メートルもの高さのツリーは、地震や強風に耐えられるよう、世界初のオリジナルシステムである心柱制振を採用しました。これは、日本独自の建築技術の代表である五重塔の構造(中空構造の中に、構造的に独立した柱を有する構造)を再現しようとしたものです。震度5弱を記録した東日本大震災の際にも、建造物への影響はなかったとのことです。

研修修了後写真

 この日は新宿から墨田区の東京スカイツリー工事現場まで、電車・バス・新交通システム(ゆりかもめ)・地下鉄を乗り継ぐ、都内の主要な交通手段全てを利用するルートで、約40キロを移動しました。7月の蒸し暑い東京での長距離移動で、暑さには慣れている台北やジャカルタの方々も、お疲れになった様子でした。

 4日間という短い期間でしたが、研修内容に満足していただけたようです。都の職員とだけでなく、研修生同士も友好を深めるなど、ネットワーク形成にも役立つ研修となりました。来年度も、各都市の皆様からの参加を心よりお待ちしております。