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アジア通信
第17号 2011年11月30日発行
首都大学東京留学生 卒業記念レポート(前編)

 2008年から首都大学東京(TMU)で受入れを開始したアジアからの留学生。3年間の研究生活を終え、この9月、卒業生第一号となる2人の留学生が修了しました。
 アジア通信では今回と次回(18号)2回に分け、修了した2人からの記念レポートをお伝えします。

祝!卒業 首都大学東京の留学生に聞きました 〜東京での3年間を振り返って〜
Tan Kwek Tze(タン クウェック ズ)さん

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■出身 シンガポール
シンガポールは小さく安定した先進国で、選挙制、議員内閣制を採っています。観光施設は新しく、いろいろな場所にあります。シンガポールは重要な海上交通路上の要衝にあり、国民は勤勉です。そのため、その小ささには不釣合いな経済的重要性を東南アジアの中で持っています。


Duong Du Bui(ブイ ジュ ジュング)さん

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■出身 ベトナム ハイフォン
ハイフォンはベトナムで三番目に人口の多い町で、大きな港を持つ貿易の中心地のひとつです。フランスがベトナムを植民地化した時に、ハイフォンはフランス海軍の仏領インドシナ内で最大の基地になりました。ハイフォンはベトナムの中でもドーソン、カットバ、カットコ、ダオキーといった美しい海岸線とビーチがあることで有名です。ドーソンのカジノは旅行者にも人気のスポットです。
Q1 東京に来る前に抱いていた東京の印象と、東京で生活をし始めてからの印象は、どのように変わりましたか?
(タンさん)日本人はとても優しくて親切だと思いました。私は日本語をうまく話せませんでしたが、近所の人たちは家族にも私にもとても優しく親切でした。言葉の壁があり日本人とコミュニケーションをとるのは難しいだろうと思っていましたが、それは間違いでした。また東京はほかの大都市と同じだろうと考えていました。もちろんそれは本当ですが、東京にはさらに自然と文化的な魅力がたくさんあり、近代都市の多様性を増大させています。この点がとてもユニークで特別です。
(ブイさん)東京で生活する前は、日本全体、特に東京は天災(地震、火山、津波など)が多い場所だというネガティブな印象しかなく、生活や勉強をするのに安全な場所ではないかもしれないと思っていました。しかし東京での生活も3年を過ぎ、特に3月11日の大地震後の日本での生活をこの目で見てきた今では、東京はそんな災害にあった時でさえも最も生活しやすい場所のひとつだと思っています。
Q2 東京での暮らす中で、文化や習慣の違いで驚いたこと、困ったことなどはありましたか?
(タンさん)最初は文化的な違いに驚くことが時々ありました。
例えば、ごみを分別してから捨てなければならないことに驚きました。ごみを毎日捨てることができず、町のごみカレンダーに従わなければならないことにも非常に驚きました。シンガポールとは大違いです。でもまったく困りませんでした。すぐに慣れましたし、人口の多い町でのごみ管理にとても効果的な方法だと思います。シンガポール政府もこの点を見習って欲しいと思います。
(ブイさん)文化・習慣の違いといってもほんの小さなことですが、東京での生活を始めたころに驚いたのが昼休みについてです。ベトナムでは通常、昼食の後で約1時間休憩します。ところが日本人は昼食をさっさと済ませ休憩をしませんので、日本での最初の数週間は午後研究に集中することが少し難しかったです。
Q3 帰国して、一番最初にしたいことを教えてください。
(ブイさん)帰国後はまず伝統的なベトナム料理、フォーや春巻などを食べたいです。本場の味を口にすることができないのがとても寂しいので。
(タンさん)シンガポールの新しい場所にあちこち行きたいと思います。ここ数年でシンガポールは急速に発展し、新しい施設や魅力的な所や建物がたくさん出来ました。例えば新しく出来たマリーナベイ・サンズやリゾート・ワールド・セントーサです。リゾート・ワールド・セントーサはユニバーサル・スタジオ・シンガポールがあるところです。新しい動きに追い付きたいです。
Q4 帰国して、最初に会いたい人を教えてください。
(タンさん)家族(両親と兄弟)と会い、私の東京での経験について話したいです。研究のこと、個人的な経験のことを話をしたいと思います。この3年間本当に楽しかったので。シンガポール人は日本のことをよく理解していないかもしれませんので、この国の美しさと魅力を紹介したいです。
(ブイさん)帰国後はもちろん、母や妻や娘たちなどの家族に会いたいです。博士号取得のための留学中、家族は全力で私をサポートしてくれました。
Q5 東京ではなかなか食べられない、帰国したら食べたいものがあれば紹介してください。または、東京に来た際、また食べたいものはありますか?
(タンさん)シンガポールには素晴らしい料理がたくさんあります。そのひとつがサテーで、マリネして串焼きにした肉をソースと一緒に食べるものです。日本の焼き鳥によく似ていますが、ソースがとてもおいしいのです。もうひとつが海南チキンライスです。伝統的なシンガポールフードで、生姜と一緒に丁寧に茹でた鶏肉をチキンスープで炊いたご飯と一緒に盛り付けて、生の生姜とチリを添えて食べるものです。
(ブイさん)日本食はとても新鮮で健康的でおいしいです。好きな日本食はたくさんありますが、中でも寿司と刺身が一番好きなので、日本に来る機会があればそのたびに食べたいですね。
Q6 首都大学東京(TMU)での研究活動はどのようなものでしたか?また、研究室での思い出を聞かせてください。
(ブイさん)TMUのような一流大学で学ぶことを長い間待ち望んでいました。TMUでの研究中には担当教官の河村教授からから素晴らしい御指導をたまわり、大学からも多大なサポートがありました。特に国際センターや大学事務室、図書館には大いに助けられ、支障なく研究を進めることができました。
TMUで素晴らしい思い出がたくさんできましたが、中でも特筆したいのは河村教授の指導方法に大きな感銘を受けたことです。研究に行き詰ったときや厳しい期限に直面した時、休日返上で一日セミナーを行い、私の研究について議論し、解決に役立つ提案をしてくださいました。
(タンさん)TMUでの研究はとても良い思い出です。日野キャンパスは小さいキャンパスでしたが、静かで研究活動にはとても適しています。渡辺研究室の最新鋭の施設を使って実験出来たのが楽しかったです。唯一難しかったのは機械を日本語で操作することでしたが、操作方法はすぐに日本語で覚えられたので特に困りはしませんでした。研究所の学生とのランチタイムも楽しかったですね。文化的なことについての意見交換をして日本のことをより多く学びました。TMUの教官も学生もとても優しくて親切でした。

続きは次回のアジア通信でお伝えします。お楽しみに!

2011年Best Poster Award受賞

<研究テーマと研究成果>
■Tan Kwek Tze(タン クウェック ズ)さん
私の研究の目的は、航空機の翼に使用される先進複合材料の衝撃損傷許容性の拡大に、厚さ方向縫合がどのような効果があるかを総合的に理解することです。
3年間の研究期間中に、専門家の検証を受けた原稿6本を国際的な学術誌で発表し、会議論文15本を国内会議と国際会議の両方で発表しました。最近、スイスで開催された国際会議でBest Poster Awardを受賞しました。このとき世界中から論文が集まりましたが、この賞を受賞したのはこの論文だけでした。
【タンさんの研究について 詳しくはこちら】
http://www.asianhumannet.org/newsletter/201102/1.html

「世界環境と水資源会議」に出席 河村教授と
カリフォルニアにて

■ Duong Du Bui(ブイ ジュ ジュング)さん
世界中で、地下水は最大かつ最も重要な飲用水源です。地下水の持続可能な管理は、清潔な飲料水への需要が高まることが考えられる発展途上国の未来のために絶対必要な課題のひとつです。地下水の管理は、ベトナムの紅河デルタで特に重要です。この三角州では地上水の分布にばらつきがあり、水質も良くありません。そのため水の供給の多くを地下水に頼っているのです。そこで、紅河デルタで持続可能な地下水開発を確保しながら地下水の分析をさらに進めるための基礎資料を提供するために、帯水層系の空間的特長と地下水位の傾向を調査する必要があります。研究の主な目的は次のとおりです。(1)帯水層の構造を確認し帯水層系の特質を決定する。(2)確認した帯水層の地下水位について最近の変化傾向を明確にする。
首都大学東京での3年間の研究により、紅河デルタの帯水層系が確認され、特質が明らかになりました。
【ブイさんの研究について 詳しくはこちら】
http://www.asianhumannet.org/newsletter/200905.html#03