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アジア通信
第25号 2013年3月21日発行
アジアで活躍する『人』を知る
〜宮崎晶子 アジア大都市ネットワーク21 事務局スタッフ〜

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アジアの都市で日々活躍する行政職員や今後の活躍が期待される留学生を紹介する本コーナー「アジアで活躍する『人』を知る」。今回は、アジア大都市ネットワーク21(ANMC21)の東京都事務局として、総会をはじめ様々な事業に取り組まれてきた宮崎晶子さんに話を聞きました。

共通する部分や分かり合える部分が必ずある
−今の自分を創ったもの−

子供の頃、本を読むのが好きで、世界の昔話やおとぎ話に日本とは異なる風俗、習慣や食べ物などが出てくることを面白く感じていました。また、家の近所を「探検」して、行ったことがないところに行ってみるのも好きで、帰りが遅くなって、よく怒られたりもしましたね。今思えば、好奇心旺盛な子供だったのだと思います。未知のものに対する興味があり、ワクワクするところは今も変わっていないと思います。

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アジアの子供たちが描いた絵を東京都庁で展示
描き方、色の選び方が都市によって全然違う。
そういった違いを発見するのが、
昔から変わらず好きですね。
音楽や美術、またエスニック料理などが好きで、学生時代は、よく旅行もしました。沢木耕太郎の「深夜特急」(※1)を読んだり、ガムラン音楽(※2)を聴いたりして、もっといろいろなところに行ってみたい、人に会ってみたいと思うようになりました。また、大学の先生で、「国際人の条件は、何でも食べられてお酒が強いことだ」というのが持論の方がいたのですが、食事を一緒にすることを通じて、会話も生まれより親しくなれるので、全くそのとおりだなあと、今改めて思い起こすことがあります。
外国に初めて行ったのは大学2年でイギリスに留学したとき。留学したばかりのときは、ホームステイ先に住み込みの若くてきれいな「ナニー」がいる、とか、紅茶が美味しい!とか、イギリスと日本の違いにばかり目がいっていましたが、しばらく住んでいると、伝統を大切にするとか、島国のせいか、知らない人や外国人に対して、最初は控えめな接し方をするとか、似ている部分もたくさんあるなと思うようになりました。異なる国で暮らしていても、共通する部分や分かり合える部分が必ずあると思うようになった大きなきっかけだと思います。

(※注1)深夜特急:作家、沢木耕太郎の紀行小説で、インドのデリーからイギリスのロンドンまで、バスだけを使って旅行をする道中での街の情景や人々との出会いが描かれており、特にアジアのくだりは、街の熱気が伝わってきます。自分も、学生時代にバックパックで旅行したのですが、この本を読んで、もっといろいろな国に行き、街を訪ね、人に会ってみたいと思うようになりました。
(※注2)ガムランとは、インドネシアなど、東南アジア地域で演奏される音楽で、大・中・小のさまざまな銅鑼や鍵盤打楽器による合奏です。さまざまな音質の音が一つずつブレンドされていって、厚みのある音のうねりがつくられていくのを聴いていると、ゆったりしつつも元気が湧いてきます。

アジア都市に暮らす人々の幸福のために「混成部隊」の力を結集していきたい
−ANMC21での経験−

2005年、アジア感染症対策プロジェクト第1回目となるプロジェクト会議が東京で開催されました。私はこの時、会議の企画・運営を担当していました。実は、これが私とANMC21の「出会い」だったんです。

略歴:ANMC21と私

2005

アジア感染症対策プロジェクト
第1回プロジェクト会議(東京)

・ANMC21との出会い。
・会議の企画から運営までを担当

2006

アジア感染症対策プロジェクト
第2回プロジェクト会議(台北)

・早朝のサイクリングからはじまり、夜市散策、歓迎レセプションでの台湾の伝統的な縁起ものの紹介など、台北市の心のこもったおもてなしメニューが心に残っています。

2009

バンコク総会

・首長級による会議を初めて体験。
・現地のタイのメディアも多く来ており、注目度の高さも感じました。

2010

東京総会

・知事・市長級のVIPを東京に招待する大きなチャンスとプレッシャー。都庁内の各局から応援を得て、充実した会議や視察メニューを組み立てることができました。
・視察時の写真などは、みなさんとてもよい表情で、東京の魅力を多少なりとも味わっていただけたのではないかと思います。

2011

ソウル総会

・ソウル総会と連動して「低炭素・グリーン成長博覧会」に出展。この環境見本市には、意外なことに、これまで外国からの出展がなかったとのこと。ソウル特別市の協力を得て、韓国市場に東京の環境技術を紹介する機会を持つことができました。

2012

シンガポール総会

・会場になったマリーナベイサンズのすぐ近くの一等地に “ガーデンバイザベイ”という公園、植物園がオープン。限られた国土を綿密な、また長期的な計画により活用しているシンガポール政府の姿勢が明確に見える施策だと思いました。
・視察先を案内してくれた若者たちが、礼儀正しく、賢かったこと、シンガポール政府の要職にある方々が若かったのも、とても印象的!

9月開催の会議に向けて、4月から準備を開始しました。国際会議を開催するには準備期間が短かったので、毎晩遅くまで参加都市の担当者と調整に調整を重ねたのを覚えています。ヤンゴンからのプレゼン資料がなかなか上手く受け取れず、やっと無事に受け取れたときは、担当者のシャロンさんと一緒に、電話のこちら側と向こう側で喜び合いました。

初めて開催された会議でしたが、全部で7都市(デリー、ハノイ、ジャカルタ、シンガポール、台北、東京、ヤンゴン)が参加しました。新型インフルエンザ対策についての議論は参加都市の関心も非常に高く、会議が無事成功に終わった時は、感無量といった感じでしたね。
嬉しかったのは、翌年2006年、台北で同じ会議が開催されたのですが、その時の担当者から「東京での会議が素晴らしかったので、東京からノウハウを学んで対応するようにと、上司から指示を受けていた」と言われたとき。「東京の緻密な準備の仕方はとてもよい勉強になりました」と言っていただきました。

今の部署では、会員都市の首長が会する「総会」の準備や、事務局の運営を担当しています。
首長級による会議を初めて体験したのは、2009年、バンコクでの総会でした。会議の規模も大きく、実務担当者レベルの会議とはまた違った準備が必要だと感じました。共同記者会見には、現地のタイのメディアも多く来ていましたし、注目度の高さをひしひしと感じました。総会と同時期に、ASEAN事務局長であるスーリン氏のイニシアティブでCool ASEANという会議が行われたほか、総会にもオブザーバーとしてビエンチャンが出席するなど、ASEAN地域における連帯感が垣間見えた気がしました。

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Gardens by the Bayにて
シンガポールの担当者は皆とても礼儀正しく
スマートだったのが印象的

現在は、国際社会の中で、「都市」の存在感や果たすべき役割というのが特に大きくなっていると思います。「国」よりも、人々の暮らしに近いレベルにあり身近である「都市」という単位で人の交流や技術・ノウハウの共有を行っていくことにより、互いの都市に住む人々の生活が豊かになっていけば、素晴らしいと思います。
ただ、「都市」に与えられた権限というのは国によりさまざまです。特に、ANMC21の会員都市は、首都であることが多く、国の直轄となっていて、分野によっては都市が権限を持っていない。そのため、「都市」と「都市」という対等な立場で相互に協力したくても難しいケースもあります。
会員都市は、いずれもアジアを代表する都市で、文化や宗教、国民性などは異なっても、「首都」またはその地域を代表する「主要都市」としてのエネルギーに満ちています。日々やり取りをしているアジア各都市の職員たちも、日本人からはのんびりしているように見えても、やはり優秀で前向き。最終的には、きっちり成果を出すところがすごいと思います。
「都市」が発展していくときに発生する課題というのは共通しているものです。アジア都市に暮らす人々の幸福のために、この「混成部隊」の力を結集していけたらすごいことができるんじゃないかと、それをやりがいに感じています。

最後にはきっと分かり合える
−自分を支えているもの・信念−

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昨年8月には、ジュニアアジアスポーツ交流大会にトムスクからの視察団をお迎えしました
仕事を通じ、国内外問わず、多くの素晴らしい出会いがあります。アジネットでは都市担当制をとっており、私の現在の担当都市は、バンコクとトムスクです。
シンガポール総会では、都市担当として嬉しかったことが一つありました。平成22年からオブザーバーとしてANMC21に参加していたトムスクが正式に会員都市として加入することが決まったんです。初めにANMC21へのトムスク参加の話が出てから約3年、積極的に総会ほか共同事業に参加していたトムスクが、オブザーバーから会員都市になり、ネットワークの活動の幅もさらに広がっていくのではないかと、トムスクの今後の活躍に期待しています!
バンコク総会開催の際は、事前出張を含め二回バンコクに出張しました。総会の成功を目指し、バンコク都の国際部の方々と夜遅くまで打合せを重ねながら一緒に仕事をする中で、信頼関係も深まりました。そのときは、お互いに仕事で頭がいっぱいだったので、バンコク滞在中にみんなそろって写真をとれなかったのが残念です。

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海を隔てたバンコクの「同僚」と、
ようやく叶った記念写真
その後も、毎年実務担当者会議や総会で顔を合わせる機会があり、そのたびにお互い元気でいることを喜びあって、「また来年!次は○○で会いましょう!」と挨拶しあっています。添付の写真は、2012年のジュニアアジアスポーツ交流大会(東京)のレセプションの際に、バンコク都のジラポンさん、ルナパーさん、パンナライさんと一緒に撮ったもの。会員都市の国際部門カウンターパートは、机を並べて仕事をしているわけではありませんが、みなさん、海を隔てた私の「同僚」です。
立場や言語等の違いを超えて、信頼関係を築くことができる人が日々増えていくのが何より嬉しい。また、そういった出会いに支えられていると思います。
結局、仕事は一人ではできません。どんな仕事でも人との関わりというのは重要です。そんな中で、「最終的には、分かり合える」と信じて、また、分かり合うためにはどうしたらいいか、考えながら、日々の仕事に取り組む、少し大袈裟かもしれませんが、これが私の信念です。