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アジア通信
第26号 2013年5月29日発行
東京の救助技術・人命救助への取組を共有するために
―救助技術研修をバンコクで実施しました―

 東京消防庁では、職員の能力向上プログラムの一環として、毎年アジア大都市ネットワーク21(ANMC21)加盟都市の消防職員に対し「救助技術研修」を実施しています。この研修は、アジア各都市における救助技術推進指導者を養成し、各都市の実態に即した消防救助技術の向上を図ることを目的としています。
 今回は、バンコクで実施した研修の模様をレポートします。

 

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バンコクでの訓練風景

 この研修は2本立てになっており、1回目を東京、2回目をバンコクで行いました。
 1回目は2012年11月、バンコク都消防救助局の研修生6名が東京消防庁の消防活動技術を習得するため、東京にやってきました。東京の指導員は、消防活動のエキスパートとして現役で活躍している、ハイパーレスキューの隊長と隊員です。東京消防庁が実際に取り入れている実戦的な救助技術を2週間で習得してもらい、その後、研修生はバンコクに戻り、地元バンコク都消防救助局で技術に磨きをかけました。そして、2013年2月18日から3週間、今度は東京消防庁の隊員がバンコクへ。11月に東京消防庁で学び、習得した消防活動技術への理解をさらに深めるための研修を実施しました。東京で指導に当たったハイパーレスキューの隊長と隊員のほか、東京消防庁の消防隊や特別救助隊を指導している警防部員を加え、合計5名の東京消防庁職員がバンコクに集結しました。

 

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参加者全員が真剣に取り組む、
士気旺盛な訓練となった

 研修場所は、バンコクから約200km離れたタイ東部のナコーンラーチャシーマ県ラチャプラチャ訓練センター。タイの初夏としては過ごしやすい環境の下、研修は実施されました。
 訓練センターに到着し、訓練施設や資器材の確認を行った段階で訓練計画の変更を余儀なくされる場面もありました。しかし、実災害が起こった際の派遣と同じで「あるもので可能な限り有効な手段をとる」ことを実践し、柔軟に計画を変更し対応しました。

 研修は、早朝5時の起床からはじまります。5時30分に研修生全員が集合してランニング。8時に国歌斉唱、8時30分から17時まで訓練という流れでした。また、1日の研修が終了すると、東京とバンコクの参加者が集まり、翌日の訓練内容の確認及び意見交換を毎日繰り返しました。時には、予定時間を超えて話し合い、お互いの活動戦術や活動技術の確認など、綿密な協議と調整を行いました。

 バンコクの研修生は、消防救助局の8消防署から選りすぐられた40名の職員でした。東京消防庁の救助技術を習得するため、指導員の説明時にビデオ撮影するものや、休憩時間もロープの訓練を黙々とこなす向上心のある研修生が多数見受けられました。また、決められた時間に整列して待機するなど、東京の研修で実施した日本式の指導方法がすでに定着していました。

 

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修了後の記念撮影

 研修期間中は、生活習慣や風土の違いに加え専門用語などが思うように通じないこともありました。しかし、同じ消防士、図を描き説明することで内容を理解してもらい意思の疎通を図ることができました。最終日の総合訓練では、研修生が特に真剣に取り組む士気旺盛な訓練となり、日々の訓練の成果を遺憾なく発揮することができました。また、バンコク都消防救助局の一人が独学で日本語を勉強し、自作したノートを片手に食事会で目の前に並んでいる料理の名前や日常使う言葉を私たちに教えてくれる、というエピソードがありました。タイの人は親切な方が多く、「ほほ笑みの国タイ」という言葉の意味を実感することができたような気がしました。

 研修修了式後に研修生に感想を聞くと「常に笑っているのがタイ国民だが、訓練中は笑いが一切ないくらい厳しい訓練でした。でも、感謝しています」との言葉を受けました。命を預かる現場活動に対する東京消防庁の取組姿勢が理解されたものだと感じました。

 今後、研修を修了した研修生が、指導者として、バンコク消防に有効な活動技術を検証し、他の職員に技術指導することで、バンコク都消防救助局の消防活動技術が向上することを期待します。