アジアの都市で日々活躍する行政職員や今後の活躍が期待される留学生を紹介する本コーナー「アジアで活躍する『人』を知る」。今回は、トムスク州のデニスさんに話を聞きました。
遠く離れた場所に魅了された子供時代
―今の私を創ったもの―
私は子供の頃に、旅に対する強い興味を覚えました。そこで、ジュール・ヴェルヌなどの作家が書いた本をたくさん読んでは、世界中のいろいろな場所や、そこに住む様々な文化を持つ人々を思い描いたものです。遠く離れた場所に魅了され、ある日、大きくなったら必ず外国を訪れようと心に決めたのです。そして高校生になると、将来は国際関係に関する仕事に就こうと考えるようになりました。
小さい頃に抱いた印象や信念は、たとえそれが現実とはかけはなれたものであっても、我々の人生に大きな影響を与えるものです。見知らぬ場所を冒険するという子供の頃の夢を実現できなかった、といっても誰も驚くことはないでしょう。一方で、世界や人々の生活を知るには、旅は最高の手段であることに気付きました。さらに人々の暮らしを良くするには、海外体験を利用すべきであるということも、今では分かっています。様々な問題を解決するには、それぞれの文化、国民、場所によって独自のやり方があります。だから、世界中の人たち同士で交流すれば、快適な生活や持続可能な将来を築くことができるのです。私が公務員になった大きな理由はここにあります。つまり、どのようなレベルであれ政府の主な目的は、市民の快適な生活に必要な条件を整えることだというのが、私の考えです。
トムスクのスポーツ選手団が、東京でのジュニアスポーツアジア交流大会に参加
―これまで私が取り組んできたもの―
最近、手がけた仕事の中で一番やりがいを感じたのは、「トムスク・イノベーション・フォーラム(INNOVUS)2013」でした。これは年に2回行われるイベントで、ロシアのみならず世界各地からビジネスマン、科学者や役人などが集まり、最新技術の状況や課題について話し合い、ロシアおよび地域開発の方向性を定めることを目的としたものです。
ここ数年来、私は自分の町にとって非常に重要なこのイベントの準備に掛かりきりでした。同僚と一緒に、外国人参加者の窓口として働き、おかげさまで外国から参加される方の人数は年々伸びてきました。外国からの参加者が、確実に滞りなく本イベントに参加できるようにすることが、私たちの任務でした。
私は、人とコミュニケーションをとるのが大好きです。それを通して、いつも何か新しいことを学べるからです。INNOVUSも、やはり例外ではありません。このイベントでは、金融、科学、技術などを専門とする多くの方々にお会いすることができ、ほんの少し会話を交わしただけでも、私の視野は広がったのです。しかし、何と言っても、若者と接することが、仕事を通して最も印象的な体験でした。今年はトムスクのスポーツ選手団が、東京で開催されたジュニアスポーツアジア交流大会に参加しました。アジアのスポーツ選手と競うのはこれが初めてで、参加できたことをとても喜んでいるようでした。トムスクの若い選手たちは、柔道の技術について新たに学んだり、貴重な経験をして、東京から戻ってきました。私は仕事を通して、直接あるいは間接的にでも、この選手たちが幅広い知識や経験を身につける手助けをできたことに、とても誇りを感じています。
ANMC21でトムスクが果たせる役割とは
―ANMC21との出会い―
トムスク州に就職するとすぐに、アジア大都市ネットワーク21(ANMC21)の連絡担当者になりました。当時、トムスクはANMC21のオブザーバーという立場に過ぎず、もっとこの組織について詳しく知り、この組織でトムスクは何をできるか見極める必要がありました。ANMC21の事務局では、宮崎晶子さんがトムスクの担当者でした。心が広く忍耐力のある宮崎さんのおかげで、トムスクはANMC21で積極的に活動できるようになったのです。
トムスクはオブザーバーとして、職員能力向上プログラムの水道事業などに関するコースに参加させていただきました。トムスクの水道事業者の技術者が研修に参加したのですが、東京で行われている水道事業や下水処理の取組に感銘を受けてトムスクに戻ってきたのを覚えています。この海外における成功事例は、トムスクの開発に利用できる非常に重要な事例なので、幸先の良いスタートを切れたと思いました。その後、私の同僚は台北に行き、都市開発における情報通信技術の利用について学び、近年の技術の可能性を知ることができとても満足していました。
私の同僚も私自身も、ANMC21の事業はアジア都市における典型的な問題解決の糸口となり、成功事例はトムスクにも役立つものであるということが分かりました。また我々の経験を他の会員都市と共有することの重要性にも気付かされました。他都市から学び、我々の考えを他都市と共有するために、トムスクはANMC21への参加を決意しました。
事務局や会員都市の支援のおかげで、2012年にトムスクはANMC21に加盟することになりました。それ以来、新規事業の立ち上げに携わっています。トムスクは学園都市ですので、教育分野のプロジェクトを立ち上げることが決まりました。今日の国際社会で、世界各地の人々どうしで知識を共有したり理解しあうには、教育がその要となるのです。新規事業の構想はまだ最終決定に至っていませんが、学生の交流や海外留学が主な柱となることは間違いないでしょう。
トム川に映る、色鮮やかな木々の葉の美しさ
―私の街について―
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トムスクは、とても魅力的な都市です。私が生まれ育ったのは別の都市ですが、大学生としてこの地に移り住むと、すぐにトムスクやトムスクの美しい木造住宅の虜となりました。私は散歩しながら、トムスクで町並みを楽しむのが大好きです。
どこに行っても、外の広々とした空間には心ひかれるものがあるのですが、トムスクでは、ラーゲルニー公園(戦士を祀る公園)が私のお気に入りの場所です。ここは、18世紀後半に、陸軍連隊がこの地に駐留していたことに由来して名付けられた公園です。しかし間もなく、都市において自然に触れることができる場所として利用されるようになり、トムスクの住民にとっても主な憩いの場ともなりました。特に秋には、トム川に映った紅葉した色鮮やか木々の葉は、息をのむほどの美しさです。この公園に行くと、気持ちもリラックスし、自然の美しさに感動することができるのです。
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