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アジア通信
第37号 2015年3月26日発行
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東京のトイレがきれいな理由を探る
〜東京で公衆衛生研修を実施しました〜

 2015年1月21日から23日までの3日間、東京都は「公衆衛生研修-公共施設の衛生的な維持管理と住民への啓発‐」を開催しました。この研修を企画したきっかけは、東京に来訪したクアラルンプール市健康環境部の幹部から、「なぜ東京の公衆トイレはきれいなのか」という疑問が都によせられたことでした。
 東京都の職員にとっては思ってもみなかった質問で、そこから、なぜ東京のトイレがきれいと言われるのか、考え始めました。注意深く公衆トイレを見ていると、決してきれいとは言えない場所もあり、こまめに清掃をする作業員の方の姿がありました。また、私たちが幼かった20〜30年前の公衆トイレは暗く不潔で、あまり使いたくない場所であったことも思い出しました。今日、東京の人々が清潔な公衆トイレを使えるのは、清掃技術が向上し、人々の意識が変化してきたため、また、管理者が日々見回りを怠らず、努力を重ねているためであることがわかってきました。

東京駅のトイレを視察

 そこで、本研修のプログラムを企画するに当たっては、@「東京都の公衆衛生施策の歴史」、A「公衆トイレを清潔に維持するための方策」、B「公衆トイレを清潔に使ってもらうための方策」という3つのテーマに着目しました。これら3つのテーマを通じて、東京の経験をアジア諸都市での取組の参考にしてもらえればと考えたからです。

 研修には、クアラルンプールをはじめ、バンコクやデリーからも行政職員が集い、ここ数年で一番の盛況となりました。
参加者はこの3つのテーマについて理解を深めるために、都内の様々な施設を訪問しました。ここでは、特に参加者からの反響が大きかった視察場所を紹介します。

小学校の授業を熱心に参観

「公衆トイレを清潔に維持するための方策」を知るためのプログラムでは、日本で有数の乗降客を迎える東京駅を訪問し、多くの人々が使用するトイレをどのように管理しているのか視察しました。特に参加者の興味を誘ったのは、東京駅で実施されているトイレ清掃のマニュアルです。マニュアルDVDを視聴した参加者からは、拍手と賞賛の声が上がりました(都の職員も、こんなに念入りに清掃されていることを初めて知りました!)。参加者の一人は、「トイレの清掃をする方が誇りを持って働いているから、こんなにきれいに清掃ができるのだと思う」という意見を発表してくれました。
 また、「公衆トイレを清潔に使ってもらうための方策」を学ぶために、小学校を訪れました。小学校は参加者からの反響が最も大きかった場所です。参加者は小学校で子供たちが自分たちの教室を掃除している様子を見学した後、道徳の授業を参観しました。授業では、子供たちの発言を促しながら、公共のものを大切に扱うことの必要性を指導しており、参加者は活発に意見が飛び交う様子を驚きの目で見ていました。

活発なディスカッションが行われた

 まとめとして、日本トイレ協会会長の高橋志保彦先生をお招きし、参加者全員で研修から学んだことについてディスカッションを行いました。高橋先生からは、東京でもかつては公衆トイレが汚かったことや、トイレを建設する人や掃除する人が自信をもって作業できる場所にするための努力を重ねてきた経験をお話しいただきました。例えば、グッドトイレと称して、トイレに関する優れた取組を表彰する事例が紹介されました。
 参加者からは、「子どもたちへの教育が成果を上げ、人々が公共のものをきれいに使っていることがわかった」「自分の都市でも、トイレ掃除に対する意識を変え、掃除する人を尊敬するようになれば、人々もトイレをきれいに使うようになると思う」といった意見があがりました。

 本研修は、3日間という短い間でしたが、様々な視点から公共施設の衛生的な維持管理と人々の啓発について考えることができました。参加者の皆さんはそれぞれの都市に戻り、公衆衛生業務や施設の管理などの業務を続けていらっしゃることと思います。東京で学んだことが今後各都市で活用され、魅力的な都市づくりに貢献できればこれ以上の喜びはありません。