(1)販路開拓に向けたマーケティング
~ローチンカスタマーについて~
・ ローンチカスタマー(最初の顧客)は非常に重要であり、今後も積極的に深く検討する必要がある。
・ YS-11開発時は、ローンチカスタマーとして官需がある程度の規模であった。
国内市場を考えた場合、今後も旅客機開発に官需は重要である。
・ 航空機の販売やローンチカスタマーの獲得では、ファイナンスをつけることが非常に重要である。
ファイナンスをつけると様々なリスクが発生するが、リスクを回避するためにセカンダリー・マーケット
を確保しておくことが必須である。
・ あるエアラインからあまりに大量の発注を一度に受けたため、発注者の要望をほとんど取り入れて
開発することを求められ、その他の優良顧客を逆に逃がしてしまったという事例もあった。
~ワーキング・トゥゲザーについて~
・ ワーキング・トゥゲザーは、新型旅客機の開発段階から、エアラインをチームに加え、具体的な
ニーズの抽出、提案をしてもらい、よりよい旅客機を開発するユーザー参加型の開発方式であり、
最近の旅客機の開発でも行われた。 エアライン側から航空機メーカーに対して設計上の要望が
でき、そのことが設計に反映されることから、エアラインと航空機メーカー双方にとって良い
開発手法である。
・ ワーキング・トゥゲザーの好事例としては、かつて日本のエアラインから旅客機開発に参加していた
技術者が、コップ一杯の水でトイレを処理できないか提案し開発に成功した事例があげられる。
・ ワーキング・トゥゲザーは、我が国の旅客機開発においても開発・販売戦略として非常に重要で
あり、今後もさらに検討していく必要がある。
~その他~
・ 最近の海外における大規模な旅客機開発を見ていると、開発のリスクを回避するためには、
最終的には国からの保証をとらざるを得ないだろう。
(2)空港整備などの側面支援
・ 静岡空港、新北九州空港などの開港を控え、100席前後のジェット旅客機の需要が伸びる
可能性が高い。
・ 日本の国内航空旅客数は大きいが、旅客が首都圏(羽田)に集中しているのが特徴である。
特に沖縄、福岡、大阪、東京、札幌等を結ぶ幹線ルートでは大型機が使用され、何れのシーズン
でも満席である。 一方、中小型機は国内では大都市と地方都市との路線にニーズがある。
・ 羽田空港に乗り入れたいとの要望は、規模が小さいエアラインにおいて特に強い。欧州には、
早朝は72人乗り、ピーク時には中型・大型旅客機を投入しているエアラインがある。
このように、例えば東京⇔大阪間でも、深夜は50人乗りを運航する等の運航方法を考えるべき
である。
・ 国内では、地方空港に需要の伸びが出ており、海外のリージョナルジェット機メーカーが日本での
販売に成功している。 しかし、需要の伸びがあるといっても、日本国内の市場規模では
旅客機開発のサポートにはなりにくいと考える。
・ 現在、人々の生活の変化に伴い航空機の利用の仕方が徐々に変わりつつある。
それにあわせて、ドア・トゥー・ドアの運航可能性を高めたり、混雑が集中する時期にあわせて
供給を増やすなどの対応が必要となろう。
(3)アジア共通の認証制度のあり方
・ アジア独自の認証のあり方を議論することが重要である。
・ FAA(米国連邦航空局)とJAA(欧州合同航空当局)はこの10年位はハーモナイゼーションを
進めてきたが、期待された成果はあまり出てきていない。
・ FAAは、ICAO(国際民間航空機構)にアプローチしており、国連機関が世界的な統一認証を
作るのがいいのではないかとしている。
・ 航空機は、徹底した実証主義が重要であり、技術実証、実績・経験を重視する。
したがって、現在、アジア共通の認証を実現化させるのは難しいと考えるが、認証という課題は、
日本がその認識を強く持っているということを発信することが大切であり、このことが将来の
マーケティングの大きなパイプとなると考える。 |