(1)事業主体について
・ わが国においては、国や民間企業が出資した日本航空機製造株式会社が、YS-11 の開発に
成功したことがあり、その貴重な教訓を活かすべきである。
・ 国際的な航空機開発の事業体としては、欧州のエアバス社の事例があり、同社をよく研究する
必要がある。
・ かつてYS-11 を製造したときのような国策会社を設立しての航空機開発は、現状では難しいの
ではないかと思われる。
・ 最近、航空機開発に要する費用はどんどん増大している。100席クラスのジェット旅客機開発に
あたっては、安く造るという視点も重要である。
・ 顧客の機体に対するニーズは変化するため、多様なニーズに迅速かつ柔軟に応えた航空機開発
をするという視点も重要である。
(2)資金調達について
・ 欧州では政府の補助金による航空機開発が行われており、また、米国では国防費の一部を
利用した民間航空機開発が行われている。
・ 国の補助金を使って航空機を開発する場合には、WTOの取り決めやその他の国際取り決めの
動向などにも留意する必要がある。
・ 開発資金を調達するにあたっては、新たに開発される航空機を資産と捉え、その資産を裏付けに
証券を発行する手法も検討すべきである。
・ 証券発行による資金調達は、投資家への配当や償還を確実にするため、キャッシュフローの予測
を正確に行うことが必要である。
・ 開発資金を調達するにあたっては、負担した開発コストと航空機の販売機数に応じた利益分配を
受けるリスクシェアリングパートナーを考える方が現実的である。
(3)整備、部品の供給体制について
・ エアラインは、整備に要する部品を数十万点ストックする必要があり、これが大きな負担に
なっている。
・ 整備に要する費用も機体のライフサイクルコストの一部であり、整備費用の圧縮は、機体の
ライフサイクルコストの削減要因になることを念頭に置くべきである。
・ ボーイング7E7やエアバスA380では、メーカー側とユーザー側とが意見交換を行い、整備面を
も考慮した機体開発が行われており、双方にとって有益である。
・ 航空機メーカーは、本体価格の値引きに応じる一方、整備に要する部品で収益を確保する場合
がある。 新規参入メーカーもこのようなビジネスモデルを念頭に置く必要がある。
・ ボーイング社が新たに開発した部品供給システム(※(注1))は、部品の在庫費用の負担を軽減
する一方、航空機メーカーの収益源を直撃するため、他社では導入しづらいシステムである。
※注1 従来エアラインが自社で行っていた部品管理を、ボーイング社が代行するための
コンピュータシステム。エアラインは、必要なときに必要な部品を取り寄せることが可能になる。
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