Japanese | English
アジア通信
第13号 2011年2月28日発行
小規模水道の原水マンガン濃度の逆推定に関する研究
都市環境科学研究科 都市基盤環境学域
ミン ビョンデェ
 小規模水道における水道原水の水質計測は、一般的に水質が安定した通常の状態で行われています。さらに、測定が頻繁に行われないために、水質の変化はほとんど捉えられません。しかし、水温やpHのようなモニターの容易な項目は定期的に記録されます。水処理システムの改善計画の策定に当たっては、水道原水中に存在する対象物質の濃度範囲が有益で価値ある情報となります。毎日収集される水質測定値によって対象物質の濃度が特定されるとすると、過去における濃度範囲の推定も可能です。

 本研究の目的は東京都小笠原村の扇浦浄水場における過去5年間の水道原水のマンガン濃度を推定することです。この小規模水道施設に対する推定結果に基づき対象地域のために最適なマンガン処理システムを提案します。

  推定式に用いられる説明変数は毎日データ測定が行われた項目(水温、濁度、pH、色度、アルカリ度、電気伝導率)と同じで、日データを重回帰分析から得られた推定式に代入することで、過去5年のマンガン濃度の日データが推定されました。

図1.原水の水質項目の月データ


図2.マンガンの月データ


表1.相関分析の結果
説明変数 マンガンについての
相関係数
無変換 対数変換後
水温 0.288 0.332
濁度 0.374 0.422
色度 0.197 0.370
pH -0.109 -0.051
アルカリ度 -0.061 -0.097
電気伝導率 -0.096 -0.230
(n=57, r99=0.335)

 マンガン濃度の推定に用いられた6つの項目について相関分析が行われました。相関分析は非線形関係を考慮して、対数変換されたデータについても行われました。

図3.マンガン濃度の日データ推定結果


 マンガン濃度と最も高い相関を示した濁度については、月データと日データの平均はほとんど同じでした。しかし、推定式の算定に用いられた月データにおける最大値と平均値の割合は2.6でしたが、日データについては11.0でした。このことは、濁度が高いときにはマンガン濃度の測定値が収集されなかったことを示しています。日データによって推定された平均マンガン濃度に11.0(濁度の日データの最大値と平均の割合)を掛けると、 0.89 mg/L が導かれます。

 95%信頼区間での1.02 mg/Lという最大値を水道原水のマンガン濃度の上限として用いました。この推定に基づいて、マンガン除去のための浄水システムを提案しました。