都市環境科学研究科 都市基盤環境学域
グゥエン ホァン ドゥック
塩水遡上は海水が河川内に流入する物理現象です。沿岸地域に住む数千万の人々は飲料や養殖漁業のための淡水の不足に苦しんでいることから、河川からの淡水利用を妨げる塩水遡上が大きな問題となっています。ベトナム北部の紅河デルタ(RRD)(図1)は、ベトナムの人口の約23%が住む低地地帯です。RRD では海面レベルの上昇のためにすでに水資源の枯渇と汚染が問題視されています。この10年における経済の急速な発展にもかかわらず、 RRD は水環境に関連した多くの困難と課題に直面しています。現在、地下水の過剰な汲み上げ、上流の貯水池からの放流水の減少、海面レベルの上昇が塩水の遡上距離を増大させており、水資源の持続的な管理と社会経済発展のために、塩水遡上の管理と制御が必要となっています。
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本研究の目的は、観測データの分析によってRRDにおける塩水遡上の物理的メカニズムを理解し、数値的および解析的手法によって河川内の塩分分布の予測を行うことです。本研究の結果がRRDにおける多様な水問題の解決に役立つ適切な解決策に貢献するものと考えています。
RRDにおける塩分の空間分布を調査するために、我々は1次元数値解析モデルである河川解析ソフトMIKE11を用いました。このモデルによって、水位、流量、塩分濃度の数値を各河川で再現することができます(図2)。我々はまた、潮汐状況に対応して塩水遡上距離をシミュレートするための解析モデルを開発しました(図3)。
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この解析モデルを用いて、複雑な河口システムにおける淡水真水流量とその淡水流量が河川内の塩分分布に与える影響を予測しました。この解析では干満差による河川の断面の違いを考慮しているところに特徴があります(図4)。
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図3. 大潮高潮時(HWS)と大潮低潮時(SLW) における縦断方向の塩分分布比較 |
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図4. RRDの河口における断面形状と将来の海面レベル |
また、各支流河口の大潮高潮時の塩水遡上距離についても予測しています。(図5)。これまで述べたような数値的、解析的手法を用いて、紅河デルタの結合型河口における塩分の空間分布を適切に理解・予測することができます。
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これらの研究結果の多くは4つの国際会議で発表されます。
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