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アジア通信
第18号 2012年1月31日発行
アジア大都市ネットワーク21共同事業の紹介

 アジア大都市ネットワーク21(ANMC21)では、大都市に共通する課題を解決するため、参加都市が協力して共同事業を進めています。今回は、危機管理に関する共同事業を紹介します。
国境を越えた連携強化に向けて
〜東京都総合防災訓練にアジア4都市の救助隊が参加しました〜
釣り人が海に落ちたという設定で行われた水難救助の実演

消防艇「みやこどり」に乗船

準備運動も日本式・・・これは相撲!

倒壊家屋からけが人を運び出すソウルの救助隊

 日本では1923年に発生した関東大震災にちなみ、9月1日が防災の日と定められており、例年東京都の総合防災訓練も防災の日前後に行われています。2011年は、3月11日に発生した東日本大震災への災害対応が継続中であること、また、本震災から得られた教訓を訓練内容に反映させる等の理由から、例年より遅い10月29日の開催となりました。

 ANMC21共同事業「危機管理ネットワーク」では、危機管理に関する経験やノウハウの共有化を図り蓄積を進めていくとともに、危機管理に係る人材育成を行うため、毎年、東京都が実施する本訓練にアジアの救助隊を招き、合同で訓練を行っています。

 今年の訓練には、ソウル、シンガポール、台北、新北(台湾からのオブザーバー参加都市)から総勢21名もの救助隊員が参加し、過去最大規模での実施となりました。

 海外救助隊は、事前訓練や講義、視察を含む4日間の日程で来日しました。

 東京消防庁では、東日本大震災発生後、緊急消防援助隊として実際に被災地で救助活動を行った消防隊員から、現地での活動概要についての講義が行われました。予測をはるかに超えた津波被害、活動の妨げとなった積雪、さらには、器材の管理や隊員の健康管理の重要性などの話に、各都市救助隊からはその活動への賞賛の声や質問が相次ぎました。

 視察は東京消防庁臨港消防署で行われました。水難救助活動の実演を視察後、ポンプ車25台分の放水が可能である消防艇「みやこどり」に乗船しました。「みやこどり」は3月11日の震災による千葉県市原市のタンク火災の際に消火活動にあたった消防艇です。船上で視察した放水の様子は、まさに圧巻でした。

 さて、メインイベントとなる東京都総合防災訓練への参加に向け、海外救助隊は2日間かけ東京消防庁第8方面本部消防救助機動部隊との合同訓練や技術交流を行いました。

 訓練の冒頭は、日本式の準備運動。掛け声ももちろん日本語でした。最初は戸惑っていた海外救助隊の隊員も、慣れてくると「おーっす!」と大声を掛け合うなど、自国とは異なる訓練の方法や様式に刺激されている様子でした。

 総合防災訓練での海外救助隊の役割は、倒壊建物からの人命救助です。第8消防方面本部に設置された倒壊家屋を使用した訓練では、綿密に動きを確認し合い、本番への準備を周到に行いました。

 そして、訓練当日。小金井公園で実施された今回の訓練は、震度6弱以上の地震が発生した、というシナリオのもと、消防、警察、地元住民など約1万5千人が参加しました。各都市それぞれのユニフォームと装備を身につけた隊員達は、広域応援部隊として訓練の最後に登場。沢山の見学者が見守る中、海外救助隊により倒壊家屋から救出されたけが人が次々と運び出されました。

 4日間の日程を終え隊員達からは、「短い期間ではあったものの、東京の異なる訓練方法、技術を学び、理解することができた」という声が寄せられました。

 言葉も文化も異なる中で合同訓練を行い、相互理解を深められたことは、各都市の危機管理能力の向上はもちろん、人的ネットワークの構築、さらに国を越えた連携の強化につながっていきます。