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アジア通信
第23号 2012年11月28日発行
アジア大都市共通の課題、公共交通問題解決の糸口とは
〜多彩なカリキュラムを提供する、実務担当者向け研修を実施〜

 ANMC21では、会員都市の行政職員や専門家を対象に、専門分野ごとに様々な研修プログラムを設けています。今回は、2012年7月10日〜7月13日にかけて行われた「公共交通機関総合計画の策定支援研修」を紹介します。

 「公共交通機関総合計画の策定支援研修」は、東京都がアジア大都市の公共交通計画にかかわる実務担当者を対象に、公共交通機関の総合的な計画策定や事業化方策について講義・現場視察を行います。また、各都市が公共交通に関する現状や課題等のプレゼンテーションを行うことで、参加都市と東京都が公共交通機関の整備を行う際に有用な情報や知見の交換を促進し、今後の計画策定に活かすものです。今回の研修には、昨年に引き続きジャカルタから2名、台北から3名、また新たにバンコクから1名の応募があり、計6名の参加者を迎えて研修を実施しました。

―参加都市が抱える課題とは?

 今回研修に参加した3都市が抱える課題について、整理してみました。

バンコク:急速な工業化、人口の一極集中に起因する、世界一とも言われる交通渋滞が問題視されています。高架鉄道や地下鉄が整備されつつありますが、人口増加に対応しきれていない状況が見られます。

ジャカルタ:経済の急速な拡大・発展に伴う交通渋滞を緩和することが喫緊の課題となっています。そのために、バス専用道の充実や高速道路とバスとの交通結節点の整備が急がれています。

台北:発達したバス輸送システムや地下鉄が公共交通の要として機能する一方で、急増するオートバイへの対応が課題となっています。今後の重要施策として、ITSの整備や官民が連携した資金調達方策へのアプローチが進められています。また、質の高い公共交通サービスの実現に向けて、誰もが利用しやすい施設や車両の導入、案内サイン、駅のホームドア設置などに関心が高まっています。

 各参加都市はそれぞれ、多岐にわたる課題を抱えています。今回の研修では、それらの課題を互いに共有し、意見交換を行いながら、課題解決に向けたヒントを得ることを目的の一つとしていました。

―今回の研修の見所

 今回の研修では、3日目に新宿駅南口地区における基盤整備事業の現場視察を行いました。

1日目

東京都の交通計画等に関する講義

2日目

鉄道関連事業施工現場・車両基地の視察

3日目

新宿駅ロータリーの整備事業現場の視察
各都市によるプレゼンテーション

4日目

アジア各都市の交通施策の紹介についての講義

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新宿駅南口地区基盤整備事業を視察。このあと実際に、施工現場に入りました

 新宿駅は日本で最も乗降者数の多い巨大なターミナル駅であり、その周辺は商業サービスの集積地です。南口地区の整備においても交通計画に関する様々な課題を抱えていました。駅前広場の未整備による車両の慢性的な交通渋滞や歩行者の混雑、複数の高速バス路線関連施設が分散して位置することに由来する利便性の低下、さらに、南口駅前を横断する国道20号線跨線橋の老朽化に伴う安全性の低下などが懸念されていました。

 これらの課題に対応するべく、国道20号線跨線橋・高架橋の架け替えと合わせて新宿駅南口地区基盤整備事業は実施されています。

 2015年ごろに全ての事業が終了すると、道路の拡幅により回遊性が向上し、安全な歩行者空間が創り出されます。また、駅前広場機能を始めとする交通結節機能が強化されます。完成後は、2階が鉄道駅施設及び歩行者広場、3階が一般車両乗降場、4階が高速路線バス関連施設と車両別に使用階層が分かれる重層的な交通結節点となります。

 階層状の交通結節点は、アジア各都市でも珍しく、参加者からは、バスとタクシー、一般車などそれぞれの使用階層の決定プロセスからバスの発着頻度まで多岐にわたる質問が出ました。また、施設保全費用や使用料を、施設の使用者である複数の官民事業者がどのように分担するかなど、資金調達に関する質問なども出されました。活発な意見が飛び交い、非常に有意義な視察となったと思います。

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 4日間という短い期間でしたが、3都市からの参加者を迎えて賑やかに研修を実施することができました。参加者からも、「多彩な内容で、多くの価値ある施策を学ぶことができた」との意見を聞くことができ、満足度の高い研修が実現できたかと思っています。また、より深い施策の理解のため、他の施工現場の関係資料の提供も求められました。今回の参加者からの意見を踏まえ、来年度はさらに充実したプログラムを提供したいと思います。各都市の皆さんの参加を、心よりお待ちしております。

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駅ロータリー予定地で現場を見学しながら事業手法などの説明を受けました

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研修修了後の記念写真