研修生によるプレゼンテーション
アジア大都市ネットワーク21(ANMC21)では、会員都市の行政職員や専門家を対象に、専門分野ごとに様々な研修プログラムを設けています。今回は、10月22日から26日にかけて東京都下水道局により開催された「下水道維持管理技術者研修」を紹介します。
この研修は、東京下水道の先進的な取組を参加都市の下水道技術者に提供し、アジア全体の下水道技術水準向上に貢献することを目的として、2002年から実施しています。今年度は、10月22日から5日間にわたり、シンガポール、バンコクから4名の研修生を受け入れ実施しました。
研修初日の午前中に、研修生からそれぞれの都市の下水道事情についてプレゼンテーションが行われ、各都市が抱える課題について相互に理解を深めることができました。続いて、午後からは講義に入り、東京下水道の歴史、広報活動、現在、東京下水道が取り組んでいる主要施策について講義を行いました。このうち、広報活動に関する講義は、研修生からの要望を受けカリキュラムに加えたものです。来日前に東京都下水道局のホームページを見たシンガポールの研修生から、調理の工夫により油の使用量を減らし、からだにも環境にもやさしい料理レシピを紹介する「ダイエットレシピ」について、「アイデア溢れる素晴らしい取組ですね」との感想をいただきました。
コラム:担当者に聞きました その① 文書係 石垣さん 講義「東京下水道の歴史」を担当
―今回の研修には、どのような気持ちで臨みましたか?
私は東京都の職員として働き始めてまだ3年目で、研修講師、アジア各都市の研修生対象の講義はなおさら、初めての経験でした。とても緊張しましたが、研修生はとても熱心に耳を傾けてくださいました。自分にとっても、シンガポールやバンコクの取組を知ることができたのは、貴重な経験になりました。
―研修生との印象的な出来事はありますか?
お昼にお寿司を一緒に食べに行きました。シンガポールの研修生がイクラを残していたので嫌いなのかと思ったのですが、実は大好物。最後に食べようと残していたんです。考えることは同じなんだ!と皆で笑いました(笑)
―研修に参加し、一番の収穫は何ですか?
アジアの都市との間に横のつながりができたこと。研修終了後もメールで連絡を取り合ったりしています。こういうつながりを、今後も継続させていきたいです!
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講義の様子
研修2日目は、下水道管の維持管理、下水道台帳情報システム(SEMIS)、東京アメッシュについて講義を行いました。下水道管の維持管理に関する講義では、日常的に行っている巡視、点検、調査業務などの基礎的な内容から、下水道管の補修・改良工事における先進的な取組まで幅広い内容で講義が行われました。
研修3日目は、下水道管の維持管理をテーマに現場視察を行い、取付管の補修工事現場のほかマンホールの補修工事現場などを視察しました。それぞれの視察先で、使われている資材の材質や採用されている工法に関する質問など、現場に携わっている技術者ならではの専門的な質問が多く寄せられました。
研修4日目は、三河島水再生センターと蔵前ポンプ所の視察を行いました。
三河島水再生センターでは水処理施設のほか、シアンの流入を監視するシアンモニターの視察を行いました。シアンモニターは、シンガポールの研修生から、下水に流入する有害物質を監視するシステムをシンガポールで構築中ということで、東京の取組を学びたいとの要望を受け実施したものです。研修生からは、測定器の仕組みや運用方法など熱心な質問が相次ぎました。
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取付管補修工事現場
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シアンモニター
コラム:担当者に聞きました その② 運転情報管理係長 矢吹さん 講義「東京アメッシュ」を担当
―今回の研修で工夫した点は何でしょうか?
東京の広報活動について知りたいという研修生の要望もあったので、アメッシュのHPにアクセスしてもらうなど、東京の広報を実際に利用者の視点で体験してもらいました。
―研修生とのやりとりで、印象的な出来事はありましたか?
研修最終日、研修生に花札(※1)を記念に贈りました。花札には、日本の四季が描かれています。一年を通じて寒暖の差があまりない国の研修生には、とても珍しく、新鮮に映ったようです。
―今後、東京とアジア大都市の関係をどのように築いていきたいですか?
日本国内の他の自治体と同じように、海外の都市とも頻繁に情報交換が出来る関係であること、これが今後目指す姿です。でもそれは言葉の壁もあり、とても大変なことです。ただ、今回の研修のように、参加者がとても満足し、自分の都市に東京で得た知識や情報を持ち帰ってもらうことで、少しでもお互いの関係が深まればいいと思います。
※花札:日本の伝統的なカードゲーム。札にはそれぞれ植物や動物等が描かれており、その絵柄によって点数が決まっています。
研修最終日、研修全体を振り返る「意見交換会」では、幅広いテーマについて質疑が行われ、より一層、東京下水道の取組について理解を深めることができました。最後に下水道局長から研修生に、「今後も是非、人と人との交流を深めていきましょう」との言葉とともに修了証が交付されました。
研修終了後、研修生から「自国でも応用したい技術を多く学ぶことができ非常に満足している」との感想が寄せられるなど、研修生にとって満足度の高い研修を実施することができました。また、5日間の研修は、東京都だけではなく2都市の研修生同士の友好も深めるなど、人的ネットワークの形成にも大いに役立つものとなりました。
この研修が、各都市との下水道技術交流にとどまらず、各都市が抱える課題解決の一助になれば幸いです。来年も多くの研修生の参加をお待ちしております。
コラム:担当者に聞きました その③ 技術調査担当係長 萩山さん 3日目の視察を担当
―研修の準備をする際に、配慮したことは何ですか?
参加各都市の状況ですね。洪水、集中豪雨対策を課題にしている都市から研修生が来るわけですから、ニーズに適った視察先を選定するよう工夫しました。
―研修生の反応はいかがでしたか?
とても熱心で、真面目。疑問に思ったことはその場で解消しようとする。担当者として、分からないことは分からないと疑問をぶつけてもらえるのは嬉しいことでしたし、そういったやりとりはとても楽しかったです。
―海外からの受入れを対象とした研修の醍醐味は、ズバリ何でしょう?
それぞれの都市の課題の中には、実は東京とよく似たものもあります。シンガポールとバンコクのプレゼンの中で、東京にはない技術や取組方法を聞くことができました。研修を開催している都市にも「学び」があること、それが醍醐味ではないでしょうか。
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修了証交付式を終えて記念撮影 研修生、局長、研修講師
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