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アジア通信
第27号 2013年7月31日発行
首都大学東京で学ぶ留学生インタビュー(後編)
―東京で学ぶことを決めた理由―

 2012年10月から首都大学東京に入学した留学生2人へのインタビューを2回に分けてお伝えします。後編は、ダッカからの留学生ラベヤさんへのインタビューです。

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Interview with

ラベヤ アクタルさん

出身地:
バングラデシュ、ダッカ
研究テーマ:
「地球化学的、宇宙化学的試料と環境試料の
元素分析による元素の起源、進化と堆積の研究」
http://www.se.tmu.ac.jp/chem/Japanese/index.html

Profile of my hometown:ダッカから東京へ

 私の故郷はダッカ、バングラデシュの首都です。東京と同様に、ダッカはとてもにぎやかな人口の多い都市で、国の政治、文化、経済の中心です。美しい自然と大都市の設備が両方あるので、人々は国内のほかの場所よりもダッカや東京に住みたいと思うのです。魅力的なエンターテイメントも楽しめるし、その意味でも東京とダッカは他にない存在です。
 個人的にはダッカのすばらしい屋台で美味しい物を食べられないことが残念ですが、同時に東京の清潔で空気がきれいな環境も楽しんでいます。ですが、東京での生活費は母国に比べて予想していた以上にとても高いです。東京は世界一物価が高い都市だと知っていたものの、それを自分が体験し愕然としました。どうしてりんご1個が150円にもなるのか?でもそれにもなんとか慣れて、今は東京での生活がとても快適です。

 

日本で学ぶことを決めた理由

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研究室にて
 首都大学東京では、理工学研究科の宇宙化学研究室に所属しています。隕石の中の多量元素や微量元素の存在度を分析する研究室です。隕石は宇宙からやってくる地球外物質です。惑星、月、小惑星、微惑星などの一部である可能性があり、私たちの星地球とは違い、時間を経ても変化しません。そのため、隕石の分析によって、太陽系誕生の様子や、その後何が起きたのかを教えてくれる多くの情報を得ることができます。
 隕石に含まれるさまざまな元素のなかで、白金族元素(PGE)は太陽系の起源を様々な側面から説明する特別な存在です。私は現在、さまざまなサンプルからPGEを抽出する作業を行っています。まだ研究は始まったばかりで、この研究に環境が与える影響を調べているところです。隕石の中に存在するPGEはごくわずかで、ppb(10億分の1)レベル、時にはppt(1兆分の1)レベルです。精度を得るためには環境が分析にどのような影響を及ぼすかを確かめる必要があるのです。この作業を終えた後で、隕石の分析を始めます。
 夜空の星を眺めたり宇宙のなぞを解明したりすることが嫌いな人はいないはず。私も、宇宙のことを知りたい、宇宙に関する何かを研究したいと心の奥で強く願っていました。それは設備が充実していない自国ではかなわない願いでした。日本には、南極から隕石を回収したり、宇宙船を送って小惑星からサンプルを採取することのできる技術的に高度な設備があります。この研究室に入るチャンスを得たとき、迷いはありませんでした。そして今ここにいるのです。

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研究室の仲間との時間も楽しみ
 来日前、日本人は「ワーカホリック」だと聞きましたが、本当の意味は分かりませんでした。今では「ワーカホリック」がどういうことかを知っています。誠実で勤勉であること、仕事への情熱です。私もそうなれるよう努力をしています。
 私が取り組んでいるのはとても面白い研究テーマですが、初めてのことばかりでとても苦労しています。聞いたことのない専門用語をたくさん学ばなければなりません。今少し心配になっているのは、これらの用語を覚えるだけでは不十分で、マスターする必要があることです。それでも私が幸運だったのは、弱みを克服するために、研究室が多大な協力をしてくれることです。
 

アジアと私:私のアジアでの役割

 首都大学東京における私の研究は理論的なものが主です。アジアの発展に直接貢献するものではないですが、この様な研究は発展の象徴になります。私たちを取り巻く世界、宇宙を知ること、地球という惑星が経てきた時間を知ること、愛する地球の未来を知ること、こういったやりがいは、他の研究では得られません。このテーマの研究をする機会を得て本当に幸せです。
 母国には宇宙化学を扱う研究所がなく、実験を行うのに必要な設備しかありません。日本での研究が終わったら、可能であれば、母国での研究指導を始めるかもしれません。それは次世代の人々が成し遂げるであろう旅のほんの始まりに過ぎません。ここで研究仲間と共有している経験と知識を母国にも紹介したいのです。どこまで進められるかは分かりませんが、母国で何か良いことを始められると思います。将来的にはバングラデシュとアジアを次の発展段階へと導いてくれる偉大な宇宙科学者が生まれるかもしれません。

 

東京での生活

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留学生仲間と雪の残る福島へ

 東京での予定はびっしりです。研究もありますが日本での生活も楽しみたいと思います。私は最初にある問題に直面しました。物価です。東京の物価はとても高い。奨学金の最初の支払いが遅れることを知っていたので、当初の生活に十分足りると思えるだけのお金を持ってきました。しかしこれだけあれば余裕だろうと思っていた所持金が東京では足りないのです。本当に驚きました。そして東京は世界一物価の高い都市であることが分かりました。
 今では生活費の高さにも慣れましたが、もうひとつ悩ましいことがあります。それは言葉です。ここではほぼすべてが日本語で英語表示があまりありません。非力な学習者である私は日本語の扱いに困っています。それでも、難しい状況を(少しだけ)楽に乗り切ることのできる魔法の言葉を知っています。「すみません」です。何も分からないとき、まず誰かに「すみません」と話しかけ、それからとても簡単な英語で助けてくれるようお願いします。大抵の場合、簡単に問題が解決されます。そうは言っても、やはり東京で生活するには日本語の学習が必須です。
 東京の気候は少なくとも私にとっては非常に寒いです。バングラデシュでは雪がまったく降らないので、雪を初めて経験したときは、とても興奮しました。とても美しく何もかもが真っ白でした。ですが、すぐに雪についてのもうひとつの事実を知りました。雪道を不用意に歩くと足を骨折して何日もベッドで過ごすはめになるかもしれないということです。日本での生活を乗り切るために学ぶことがまだまだたくさんあります。
 総じて、日本での生活は楽しいです。用のない日は東京のあちらこちらに行きたいと思っています。GPS付き携帯と地下鉄路線図と東京都地図を持っているので、行きたいところはどこへでもひとりで行けます。イスラム教徒にとっては日本で手に入るものがすべて食べられるわけではありませんが、さしみ、寿司、うどん、味噌汁、魚、デザートなどの日本食は大好きです。母国で日本食を食べたことはありませんでしたが、今は好きになりました。
 (家族抜きの)生活はとても楽しいとまでは行きませんが、とても悲しいというわけでもありません。新しい環境に忍耐強く適応すればいいのです。もてなしの国日本は私たちを愛で受け入れてくれています。
 どうもありがとう、首都大学東京。ありがとう、日本。