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アジア通信
第33号 2014年7月31日発行
世界で活躍できる都市型捜索救助のプロを目指して
‐「都市における捜索・救助」研修 主催者と研修生へのインタビュー ‐

 2014年4月に、シンガポールでアジア大都市ネットワーク21(ANMC21)共同事業「職員能力向上プログラム」の一つである、「都市における捜索・救助」研修が実施されました。毎年とても充実していると評判のこの研修について、研修を運営するシンガポールのカナン隊長とANMC21メンバー都市から参加した2人の研修生に感想を聞きました。

【カナン・セルバラージ隊長(シンガポール市民防衛局)】
この研修の目的は何ですか?
―この研修コースの目的は、都市型捜索救助(USAR)が必要とされる状況における都市型捜索救助活動の実践技術・技法を、外国人参加者に身につけさせることにあります。 このコースを修了した参加者は、USAR状況下 における救助活動の管理運営の概念と原則の説明ができるようになっていると共に、様々な救助の場面においてプロとしての救助使命を果たし、USARが必要な災害に効率的に対応するための熟達した救助スキルや設備に関するノウハウを、実証することができるようになっているはずです。

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研修に参加した仲間たちとともに

今までに、どんな国や地域から研修に参加していますか?
―中国、台湾、マカオ、オーストラリア、モルディブ、台北、デリー、クウェート、アブダビ、サウジアラビアなど・・それからもっといろいろな地域からも参加してくれています。

訓練の計画を立てるとき、どんな工夫をしていますか?もっとも力を入れているところはどこでしょうか?
―USARというのは極めて広範囲に及ぶテーマになるので、そのすべてを2週間で習得するのは至難の業です。しかし私たちはコース内容の検討にあたり、さまざまなUSAR 課題を取り入れ、コースが興味深いものとなり、受講者全員ができるだけ積極的に参加しコースからできるだけ多くのものを習得できるよう、最善を尽くしています。

訓練中の興味深い出来事は何ですか?
―このコースのクライマックスは、コースの最後に行われる実習訓練です。そこでは、海外任務で遭遇する実際の現場をシミュレートし、受講者に様々な救助シナリオを次々に実践してもらいます。 実習は長時間に及ぶので、受講者たちは実習時間を通じて冷静さを維持する必要があります。どんなシナリオが用意されているか、いつ終わるのか、受講者には知らされていないので、最後まで気が抜けず、目が離せません。

どんな時に最もやりがいを感じますか?
―私は教えることが好きで、海外での訓練コースを運営管理するのを楽しみにしています。他国の救助隊員や消防士と出会い、一緒に活動し、最良の訓練方法を共有することができることを、心から楽しみにしています。この仕事で最もやりがいを感じるのは、受講者たちが最後の訓練を終え、コースを成功裏に修了する瞬間に立ち会えるときです。

今後この研修の受講を検討しているアジアの都市の救助隊員たちに、メッセージをお願いします。
―USAR についてより多くのことを学び、習得したUSAR スキルを実践に移し、自らに挑戦し、他国の救助隊員と出会い、最良の救助方法を共有できる、そんなコースを探しているなら、「都市における捜索・救助」研修はまさにうってつけのコースかもしれません。

【ANMC21参加都市からの研修受講者 マニシュ・クマールさん(デリー準州消防局)、蔡明修さん(台北市消防局)】
お二人はなぜこの研修を受講しようと思ったのですか?
(マニシュさん)私は、インドの首都デリーの防火安全に責任を持つデリー準州消防局に勤めています。デリーは、火災に加えて、地震、洪水、サイクロンなどの自然災害、そして放射線緊急事態、工業災害などの人災に見舞われがちです。 (インド政府が地震の規模を想定して作成した)地震マップによると、デリーは(2番目に危険と予想される)ゾーン4となっています。こういった要因が相まって、人命、財産、環境に計り知れない損害を与える同時多発火災や建物の崩壊が発生する可能性があります。 私たちはさまざまな訓練コースを実施してきましたが、国際的な訓練は経験したことがありません。 人命を守り、被害を軽減するための能力向上策として、当庁は、最良の国際的訓練を受けられるこの研修に私を参加させたのです。

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講義中

(蔡さん)私がこの研修に参加した理由は、もっと多くの救助技術を学ぶためです。研修を受けることで、より良い仕事ができるのではと考えました。

スケジュールを拝見すると、とても厳しい時間割のように思えます。実際の訓練の内容はいかがでしたか?
(マニシュさん)訓練スケジュールは本当にタイトで、リラックスする時間もほとんどありませんでした。しかし当然それは自分たちのためになるわけです。トレーニングの内容は、目的に沿ったものとなっており、理論の学習だけでなく、教室で教わったことすべてを実践する訓練コースが後に続きます。コースの内容は、バランスの取れたものであるだけでなく、緊急時に直面しそうな場面に関する知識を確実に習得できるものになっていました。

(蔡さん)訓練の内容は、倒壊した建物に行く手を阻まれる状況の中で、どのように救助を必要としている人を捜索し、助けるかということでした。

実際の訓練に参加してみて、何かメリットはありましたか?自分の都市でも役に立つと思われるプログラムはありましたか?
(マニシュさん)訓練への参加は、きわめて有意義で、さまざまな技術にじかに接しそれを実践に移す機会を与えてくれたという点で、間違いなく有益なものでした。すでに申し上げたように、デリーは地震や洪水が非常に多いところなので、建物崩壊からの救出訓練は、尊い人命を守るため学んだ技術を実際に行うにあたって、必要な洞察力と自信を与えてくれることは間違いないと思います。

(蔡さん)世界のあらゆる場所で危険の中にある人たちを救助するため、様々な国から集まった救助隊員と情報を共有しようとするとき、コミュニケーションはとても大きな問題になります。 言語の違いがあるからです。しかし、今回の研修に参加して、今まで知らなかった各国の救助の方法を学ぶことができました。これは私にとっていい経験でした。これから世界のどこで行われる任務についても、言葉が通じなくても各国からの救助隊がどんな救助をしようとしているのか理解できると思います。

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訓練中

研修の中で最も大変だったことは何でしょう?
(マニシュさん)訓練は毎日骨の折れるものでした。特に、学んだことを実践に移す28時間に及ぶ訓練は、最も困難でありなおかつ最もやりがいのあることでもありました。

(蔡さん)最も大変だと感じたのは、シンガポールの暑い気候です。気温が高いと、体力を急激に消耗してしまいます。救助隊員はマスクを着け、ヘルメットをかぶり、長袖の服を着ているので、気温が急激に上昇すると、救助活動を長時間行うのが難しくなるのです。

この訓練のために、世界中の都市から参加者が集まりました。いろいろとお話されたと思いますが、他の都市の参加者は、この研修についてどんな印象を持っていましたか?
(マニシュさん)訓練時間外だけでなく訓練の最中にも、他国参加者との交流があり、それぞれの国における防災訓練施設についてアイディアや意見の交換を行いました。シンガポールの防災知識と訓練施設は最高で、訓練のやり方も最高にプロフェッショナルだ、というのが皆の一致した意見でした。

(蔡さん)各国からの参加者(もちろん私も含めて)シンガポールのこの研修は救助技術の経験を互いに共有するためにとてもいい機会だと考えているはずです。

授業以外でも研修生同士で交流する機会はたくさんあったと思います。授業外での交流や寮での生活環境はどんな感じでしたか?
(マニシュさん)トレーニング面以外にも、消防・救急サービスの組織体制、火災予防のための規制、職場での日常の仕事など、お互いの国の消防・救助業務に関するもろもろのことをについて意見交換を行い、お互いに比較し合うのが常でした。また、様々な国の多様な文化について知る機会もありました。

(蔡さん)私の乏しい英語力とボディランゲージで各国からの参加者とやり取りするのはとても楽しい経験でした。スムーズに会話ができなくても全く構わないと思います。私たちは相手が何について話しているのかわかっています。参加者とは、研修で習ったことについて意見を交わしたり、わからないことがあれば教えてもらったりしていました。

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マリーナ・ベイの前で

平日の授業後や週休日はどのように過ごされましたか?
(マニシュさん)平日は、シンガポール市内見物をする時間はほとんどありませんでしたが、国ごとの施設・設備の違いについて常に意見交換をしていました。 週末には、ジュロンポイント、セントーサ、シロソビーチ、オーチャードロード、クラークキー、リトルインディア、ムスターファセンター、チャイニーズガーデン、マリーナベイなどを訪れ、シンガポールの生活様式や、この国の発展度合などを知ることができました。

(蔡さん)週末には、買い物に行ったり、地元の料理を食べに行ったりと、観光客のように楽しみました。私たちはみんな違う都市から来ているので、これはとても楽しい経験でした。訓練が一番大事ではありますが、今回の研修はとても多くの友人をつくるいい機会でもありました。そして、シンガポールはとてもいい街でした。

最後になりますが、この研修に参加する一番の魅力は何でしょうか?

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デリーと台北からの研修生

(マニシュさん)トレーニングスタッフの献身と力量もさることながら、このコースにおける様々なトレーニング段階において我々のために彼らが用意した方法論は、最高のものだっただけでなく、私たちがこれから救助の道を歩んでいく上でも大いに役立ってくれるでしょう。

(蔡さん)この訓練に参加できたことをとても誇りに思っています。そして、様々な国に友達を作れたこともとてもうれしかったです。