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アジア通信
第35号 2014年11月27日発行
大規模災害に備えたアジア都市間の連携を強化
− 東京都総合防災訓練に4つの救助隊が参加 −

 ANMC21共同事業「危機管理ネットワーク」では、危機管理に関する経験やノウハウの共有化を図り蓄積を進めていくとともに、危機管理に係る人材育成を行うため、毎年、東京都が実施する総合防災訓練にアジアの救助隊を招き、合同で訓練を行っています。
 今年も8月30日に訓練が実施され、ソウル特別市、台北市、オブザーバーとして新北市と台湾赤十字から21名の救助隊員が参加しました。

 海外救助隊は、事前訓練や講義、視察を含む4日間の日程で来日しました。初日の午前中は東京消防庁で講義を聴講しました。講義の内容は、消火活動にあたる救助隊員の活動時の安全管理の重要性を説明するもので、日々同様の活動にあたっている隊員たちは、興味深そうに聞いていました。

消防隊員の装備をじっくり見学

 午後は池袋消防署と都民を対象とした防災教育施設である池袋防災館を視察。消防署では資器材の見学や、消防活動現場における指揮の取り方、活動方針の決め方などについて説明を受けました。さすが現役の消防士である救助隊員たちは、装備の一つ一つを大変熱心に観察し、細部にまで質問が及んでいました。また、自らの都市の状況についても積極的に教えてくれ、都市間の違いについて学びあう機会になりました。池袋防災館では都民向けに展示している消火器の使用法、煙の立ち込める部屋からの脱出や地震の揺れの大きさ体験などを紹介しました。



 次の日からは、東京消防庁第六方面本部消防救助機動部隊を訪問し、合同救助訓練に向けた事前訓練や、技術交流を行いました。

互いの技術を教え合う

 特に海外救助隊の関心が集まっていたのは、はしごを使った救助法です。はしごを使用して高所から要救護者を建物の外に運び出すのですが、建物の状況(狭さなど)や要救護者の状況に応じて、複数の方法を使い分ける技術と判断力に、称賛の声が集まりました。

 訓練の中では、各都市がそれぞれのロープの結び方や建物の破壊方法を披露しあい、その違いやその方法を採用している理由を話し合っていました。また、昼食の時間には、東京の機動部隊員も海外救助隊に交じって話をしながら食事をとりました。隊員同士のフリートークはどのテーブルも大変盛り上がりあっという間に時間が過ぎてしまい、「本当はもっと話したいのだけど・・・」という残念がる隊員が多くいました。

けが人の様子を医療救護隊に報告

 そして8月30日、いよいよ総合防災訓練当日を迎えました。猛暑が心配されましたが、幸いにも気温は上がらず、救助隊員も比較的活動しやすい気候となりました。今回の総合防災訓練は、木造建物密集地域での救助活動を想定して行われました。東京には、燃え易く倒壊の危険性も高い木造建築物が密集している地域が多く残っており、大規模災害時にはそういった地域での被害の拡大が心配されています。今回参加したソウルや台北、新北といったアジアの都市でも同様の課題を抱えており、隊員たちの気合いも高まります。

 訓練での海外救助隊の役割は、東京湾を震源とするマグニチュード7.3の地震が発生し、大きな被害を受けた東京で、東京の機動部隊員と協力して倒壊家屋に残された要救護者を救助することです。現場に到着した海外救助隊は、東京の部隊長に到着を報告し、活動場所の指示を受けました。今回の訓練は担当する家屋やけが人の場所などの情報が事前に公表されないブラインド訓練でしたが、どの救助隊も状況を素早く判断し、声を掛け合いながら的確に救助活動を進め、次々にけが人を運び出しました。

取り残された人がいないか慎重に確認

 訓練後には、東京都知事が救助隊のもとに立ち寄り、労をねぎらう姿が見られました。また、見学していた都民の方が救助隊員に話しかけ一緒に写真を撮ったり、都の担当者にも「このような協力をしてもらえると安心だね」とのうれしい声を寄せていただいたりと、多くの都民の方にアジアの都市間の協力体制を知っていただくこともできました。

 今回合同訓練を行ったのは、各都市での災害時だけでなく、海外各地で国際緊急援助隊として一緒に活動するかもしれない救助隊員たちです。今回の合同訓練を通じて互いの活動に対する理解を深められたことは、それぞれの救助隊の危機管理能力向上はもちろん、いつかどこかで合同で救助活動に携わる時にも、必ず活かせることでしょう。そしてそのことが、アジア全体の救助技術に対する評価を高めてくれることを期待します。

一緒に訓練した仲間たちとともに