アジア大都市ネットワーク21共同事業の一つ「危機管理ネットワーク」では、毎年危機管理に関する実務担当者が集まるアジア危機管理会議を、各都市持ち回りで開催しています。
今年の第12回アジア危機管理会議は、クアラルンプール市で開催され、成功のうちに閉会しました。今回は、その会議の模様をお伝えします。
ワン・ジュナイディ内務副大臣による基調講演
2014年10月1日から2日まで、第12回アジア危機管理会議がクアラルンプールで開催されました。
今回の会議には、バンコク、マニラ、ソウル、シンガポール、台北、東京、そして開催都市のクアラルンプールから、危機管理担当者約150名が出席しました。
会議は銅鑼の音とともに開会しました。最初のプログラムは、ザイトゥン市民保護局長の歓迎のスピーチ、引き続いてワン・ジュナイディ内務副大臣の基調講演が行われました。今回のテーマは、「壊滅的な危機や災害から回復する力」。内務副大臣は、基調講演の中で、近年様々な地域が災害に見舞われていること、それゆえ各都市で回復力を育成し備えることが重要であることを強調しました。
各都市の担当者による報告が続く
東京都からは、総務局総合防災部、東京消防庁、警視庁の3つの危機管理を担当する組織が、それぞれの取組について報告しました。災害に対する回復力を向上させるために、都が行っている様々な訓練をはじめ、地域での自助(自ら助ける)力を高める取組、子供たちを防災活動に携わらせることにより、ひいては地域の防災力向上につなげようとする取組、また、大都市で懸念されるテロに備え、日頃から関係機関や民間部門とのパートナーシップを強化する取組など、平常時から来るべき危機への備えに取り組んでいる事例を紹介し、参加各都市と共有しました。
今回はそのテーマに基づき、東京以外の都市からも、住民を主体とした取組や、住民を対象とした防災プログラムの紹介など、コミュニティの防災力を高めようとする努力について多くの発表がありました。プレゼンテーションが終わるごとに、具体的な内容についての質問が寄せられ、各都市での取組をブラッシュアップさせるための参考にしたいという意欲が感じられました。
高度交通情報システムを視察
会議2日目は、クアラルンプール市内にある危機管理関連施設を視察しました。まず訪問したのは、クアラルンプール市役所が管理する高度交通情報システム(Integrated Traffic Information System)。ここでは、市内の主要道路を24時間体制で監視しています。事故が発生した際は速やかに現場に急行し対応したり、市民に交通情報をリアルタイムで伝えるスマートフォンアプリを提供したりすることで、市内の円滑な移動に寄与しています。参加者はここで実際にモニターを監視している様子を見学しました。
ネットワークモニタリングセンターの説明を受ける
その次に向かったのは、ネットワークモニタリングセンター。マレーシア国内の危機管理に対応する14機関共通で使える、「高度無線ネットワーク(Government Integrated Radio Network)」を運営する施設です。危機が発生した際は、この無線ネットワークを活用して情報を共有し、迅速で適切な対応ができることについて説明を受けました。また、ここでは無線運営の訓練の様子も見学しました。これらの施設の視察を通して、クアラルンプール市とマレーシア政府の危機管理上の工夫が伺え、参考にすることができました。
今回のアジア危機管理会議では、主催者であるマレーシア市民保護局とクアラルンプール市の周到な準備のおかげで、各都市が経験を共有し、互いの取組について学び合うことができました。アジア危機管理会議をはじめとした危機管理ネットワークの取組を通じて確実に強化されてきたアジア大都市間の関係が、これからもますます深まり、アジア全体の危機や災害からの回復力向上につながることが期待されます。
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