拡大防止!感染症に立ち向かうアジアのネットワーク 〜新型インフルエンザ対策成功事例を紹介〜
「アジア感染症対策プロジェクト」は、アジアで感染症が発生した際に大都市が速やかに対応できるように、国境を越えた専門家(医師・研究者)によるネットワークの構築や、各都市行政・研究・医療機関の連絡体制の整備を行っており、現在ANMC21全会員都市が参加をしています。
今回は、昨年度実施したプロジェクト会議と海外派遣研修の概要についてご紹介します。
○アジア大都市感染症対策プロジェクト会議・人材育成研修を合同開催しました!
2010年11月9日から11日までの3日間、台北市において、第6回アジア大都市感染症対策プロジェクト会議・人材育成研修が合同で開催され、台北、ジャカルタ、ソウル、東京の4都市が参加しました。
会議ではインフルエンザ対策、結核、デング熱、HIV/AIDS等について、発表やディスカッションが行われました。
今回の会議のメインテーマであったインフルエンザ対策では、2009年の新型インフルエンザ流行時の台北市の成功事例や東京都の取組などについて、報告や意見交換が行われました。台北市では流行時にワクチンが不足した際、小児優先でワクチン接種を行ったことが、その後学校における集団感染防止に大きな効果を上げました。また東京では、各自治体、地区医師会の判断により、小学校単位で集団接種(予防接種)が実施されました。これは学校での集団感染防止につながるほか、集団で一度に接種を行うので、ワクチンを無駄にしないという利点もあります。
今回の会議を経て、各都市の経験や情報の共有化を進め緊密なネットワークを構築し、感染症の拡大防止に努める必要性を、各都市が互いに認識しました。
次回のプロジェクト会議は、11月にジャカルタで開催される予定です。
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○感染症の専門家をタイに派遣 〜アジア感染症対策海外派遣研修〜
本プロジェクトでは、感染症指定医療機関や保健所の医師、看護師、保健師を対象に、熱帯医学・感染症の研究において権威のあるバンコク・マヒドン大学熱帯医学部への研修派遣を行っています。研修では、アジア主要都市共通の問題である結核、HIV/AIDS対策や、東京における新たな感染症の流行に備えることを目的とした講義、施設訪問などを行います。
2010年は、11月14日から27日にかけて職員5名を派遣しました。
今回の研修では、タイにおける健康課題、医療保健政策をはじめ、新型インフルエンザ、結核等についてのバンコク都の取組や、日本では発生していないデング熱やマラリア等熱帯感染症について、講義や実際の診療への立会いが行われました。
デング熱とは、蚊が媒介する熱帯感染症の一つです。蚊の発生に必要な水たまりができやすい雨期に、患者が急増します。日本でも羽田空港国際化など海外がさらに身近になった今日、現地でデング熱に感染し、帰国後に発症する患者が増加傾向にあります。今回の研修で培った経験や知識を生かし、今後の診療において迅速に対応されることが見込まれます。
また、2週間にわたる寮生活を経て、帰国後もメールで情報交換を行うなど、東京都とタイの医療職どうしの直接的なコミュニケーション・ネットワークが構築されました。こうしたネットワークが、今後も日常の業務に活かされていくことが期待されます。
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★アジア感染症対策プロジェクト関連の過去の記事はこちらをご覧ください。
第4号
http://www.asianhumannet.org/newsletter/200907.html#02
第9号
http://www.asianhumannet.org/newsletter/201006/2.html