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アジア通信
第27号 2013年7月31日発行
アジアの大都市共通の課題「感染症」と闘うために
―アジア感染症対策プロジェクト 共同調査研究会議を東京で開催―
 2013年6月6日から8日まで、東京都で「アジア感染症対策プロジェクト 共同調査研究会議」を開催しました。
 ハノイ、ジャカルタ、マニラ、ソウル、東京の5都市が参加し、新型インフルエンザをテーマに、専門家による活発な議論が交わされました。その会議の様子を報告します。
 

―ジャカルタの洪水、延期を乗り越えて

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基調講演に聞き入る参加者

 この会議は、もともと2月初旬に開催する予定でした。準備も大詰めとなり会議開催の半月前となった1月下旬に、ジャカルタで大洪水との報道が・・・。カウンターパートのことが心配になり、恐る恐るメールをしたところ、幸い無事でした。しかし、「記録的な降雨が続いているため、避難者への浄水の提供や感染症の発生状況のモニタリングなどの対応に追われており、残念ながら会議への出席はできない」との連絡が入りました。
 今回の会議では、ジャカルタで実施してきたインフルエンザ・サーベイランスの状況報告を踏まえた議論を予定していました。そのため、ジャカルタ抜きでの開催はありえず、ジャカルタの参加が可能になる6月まで延期することとしました。
 6月上旬の開催に向け、すぐに準備再開。出席者が決定するまで二転三転した都市などもありヒヤヒヤしましたが、最終的に4都市からの出席が決定し、全出席予定者が無事東京に到着したとの連絡が来たときには、本当にほっとしました。

―タイムリーな話題に大盛況

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活発な意見交換が行われる

 会議では、まず東北大学の押谷教授が「世界のインフルエンザの現状と対策」をテーマとして基調講演を行いました。3月末から連日報道されていた中国における鳥インフルエンザH7N9の発生状況やパンデミックの可能性、リスクマネジメントの重要性などについての説明とともに、昨年から中東で感染例が見られる中東呼吸器症候群(MERS)についても最新状況の説明があり、活発な質疑応答や意見交換を行いました。予想を上回る約80名の出席者で、会場は大盛況でした。
 感染症がテーマなだけに、会議の出席者は、医師、看護師、保健師、研究者等、医療、公衆衛生に実際に携わる専門家がほとんどであるのが特徴です。
 そのほか、アジア各都市で重要な問題となっている洪水や地震など災害後の感染症対策やサーベイランス体制についてのセッション、また、各都市の行っている感染症対策(鳥インフルエンザH7N9、HIV、風疹など)のセッションが行われ、活発な意見交換を行いました。参加している5都市が、それぞれお互いの実状、対策を真剣に質問し合って他都市の情報を得ようとしていたのが印象的でした。

―今後に向けた協議

 2日目の午後には、ジャカルタからのサーベイランス実施状況の報告を受け、新型インフルエンザ共同調査研究2年目の実施計画案について協議を行いました。複数の都市において、今年度のサーベイランス実施を検討していくことで合意しました。
 さらに、感染症関連情報をK-net(感染症情報ネットワークシステム)を活用して参加都市間で共有していくことを確認しました。
 また、次回のアジア大都市感染症対策プロジェクト会議は、来年2月にマニラで開催されることが発表され、マニラの出席者は、メトロ・マニラ及びフィリピンの魅力を映像と音楽を使ってアピールしました。

―視察プログラム

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病院視察の様子

 3日目は、視察です。天候にも恵まれ、2日間会議室で過ごした皆さんの顔も一段と晴れやかです。今回は、東京の中でも最も都市化が進んでいる地域である千代田区内の施設を視察しました。
 千代田保健所では、ちょうど子どもの歯科検診を行っており、感染症対策だけでなく、幅広い保健所業務を理解していただきました。各出席者は、千代田保健所で取りそろえている各種パンフレットに興味を持たれ、サンプルを熱心に閲覧していました。
 次の三井記念病院では、都内の感染症診療協力医療機関における診療体制や施設等の説明を受けた後、具体的な院内感染対策や施設・設備について熱心な質疑がなされました。
 どちらの視察先も温かく受け入れていただき、たくさんの質問に対しても丁寧に説明をしていただきました。各出席者からは、「こういう施設は個人で見たいと思っても難しいので、このような機会は本当にありがたい。」との感謝の言葉をいただき、これまでの苦労が報われる思いでした。

―おわりに

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閉会式での集合写真

 アジアの国の方からは「face to faceの関係が重要である」とよく聞きます。国の体制や習慣は違っても、感染症対策という共通の目的のために働く方々と活発な議論をし、食事をともにしたりしながら様々な話をする中で、信頼が生まれ、協力していこうという気持ちになるのだと思います。こういうネットワークやパイプがいろいろなところで重層的に積み重なっていくことが、これからのアジア・世界のためにはとても重要であると感じます。
 今、プロジェクトの事務局という立場で貴重な経験をすることができることに感謝し、これからさらにこのネットワークを盛り上げていけるように、努力していきたいと思います。