クオリティ・オブ・ライフ改善に向けた社会保障及び投資 「ソウル市民福祉基準」ソウル
■ 概要
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ソウル市民福祉基準は5つの主要分野(所得、住宅、介護、医療、教育)におけるソウル市民の福祉向上をめざすものである。憲章は2012年10月、人々の基本的な生活を守り、市民的統合を実現し、社会的発展を牽引するものとして制定された。この憲章は韓国では前例のないものであり、福祉について最低限及び適切な水準を定めている。憲章の採択を受けて、市当局は現在、困窮している19万人の市民を支援している。
本プロジェクトは、2013年の国連公共サービス賞を受賞した。
■ 実施時期
- 2012年2月1日:ソウル市民福祉基準の策定が学術研究プロジェクトと合わせて開始された
- 2012年2月14日:ソウル市民福祉基準委員会が発足
- 2012年4月10日:ソウル市民福祉基準の第一稿を作成
- 2012年5月:594名の参加者を含む6つの政策ワークショップを開催。 基準の第一稿に関する意見が集められた
- 2012年5月~7月:基準の第一稿についてフィージビリティ調査を実施
- 2012年8月:1075名の参加者による円卓会議開催。コンセンサスを構築し、基準に対する最終的な編集を盛り込む
- 2012年9月:最終稿が完成
- 2012年10月:ソウル市民福祉基準の最終版が発表、採択
- 2013年4月:評価結果の四半期報告
■ 施策の特徴
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普遍的な福祉原則の受容
社会的権利の制度化に向けた原則として、ソウル市民福祉基準は、例外的な低所得者のみに福祉給付を限定する残余主義(レジデュアリズム)ではなく、あらゆる市民に福祉を提供する普遍主義(ユニバーサリズム)を全面的に取り入れている。 とはいえ、普遍的な福祉とは、必ずしも、万人が同じ水準の給付を得る資格を有するという意味ではない。普遍主義は、個人が自らの経済能力に関係なく、その状況に応じて福祉給付を受けることを可能にするものだが、経済条件及び個人のニーズに応じてさまざまな福祉給付が提供される場合がある。
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最低基準に加えて適切基準を確立
西側諸国が1940年代・50年代に伝統的な福祉制度を通じて実現しようとした「ナショナル・ミニマム」という考え方を採用することにより、所得・住宅・介護・医療・教育という5つの分野においてソウル市民の権利として「最低基準」を確立することが優先されたものの、これとは別に、ソウル市民福祉基準では、ナショナル・ミニマムより高い福祉水準として「適切基準」を定めている。 これがソウル市による福祉政策の指標となっていくだろう。
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福祉基準の策定における市民参加
ソウル市民福祉基準の策定プロセスでは、策定の初期段階、プログラム選択から基準に関するコンセンサス到達という最終段階に至るまで、直接的・間接的に市民の参加を得て、従来の有識者・官僚中心の政策決定を脱却することが重視された。ソウル市民福祉基準の策定に実際に市民が参加したことで、その政治的な実質と市政の実効性が改善されている。 ソウル市民福祉基準の策定という使命のもとで、ソウル市民福祉基準委員会が発足した。 委員会は、各分野の代表として委員に選任された市民グループ委員と、5つの福祉分野の有識者により構成された。 これは市民参加を強化するために行われた。 これと併せて一般市民の意見を聞くために政策ワークショップが開催される一方、ソウル市民福祉基準に関する意見をリアルタイムに集めるため、市民パネルであるソウル市民福祉メアリ団(「メアリ」は英語で「echo(こだま、反響)」の意)が設立された。 これによって、過去に類を見ないほど市民がプロセスに直接的に参加する機会が得られた。
■ 実績・効果
- ●福祉の盲点の解消と普遍的な福祉体制への移行。憲章の採択を受けて、市当局は現在、困窮する19万人の市民を支援している
- ●「開発」から「人間」へという政策の重点の転換がなされた
- ●市の意思決定において市民とのコミュニケーションがより大きな役割を果たすようになり、 政策決定の官僚主義的傾向が薄まっている
- ●政策実施に向けた市民参加が進んでいる
■ 費用
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2013年度予算 (単位:ドル)
総額 3,512,266
- 一般管理費 126,539
- 運営費 51,589
- 奨励費 2,729,429
- 当年度補助金 600,384
市当局の予算投入は最小限に抑えられている。これは、民間企業によるスポンサー及び民間企業の収益からの寄付によるものである。 ただし予算投入なしにこの制度を持続可能な形で運営することはできない。
■ 本件問合先
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