ニューウォーター(NEWater)シンガポール
■ 概要
公益事業庁(PUB)は、シンガポールの成長継続を鑑み、輸入水への依存が持続可能な選択肢ではないことを承知している。したがって当機関は、再生水(NEWater) や海水淡水化のような水の代替資源の開発を進めている。
シンガポールにおける水の持続可能性に対する取り組みにて、NEWaterは飛躍的な進歩をもたらした。 高度な逆浸透膜技術によって生成されるこの高品質の再生水(リサイクル水)は、シンガポールの最も戦略的なイノベーションの一つである。
■ 実施時期
- 1998年、PUB及び環境水資源省(MEWR)の連携でシンガポール再生水研究(NEWater研究)が開始された。同研究の目的は、NEWaterが国内のニーズに対応できる重要な原水資源である否かを判定すること。研究が完了した2001年、シンガポール政府はNEWaterの製造を開始した。
■ 施策の特徴
- NEWaterは、処理された使用済み水を高度な膜技術でさらに浄化処理することで製造される高品質な再生水である。同技術により、使用済み水から超純且つ安全な飲料水を製造することができる。
NEWater生成プロセスの第一段階は、精密ろ過法 (MF)である。このプロセスでは、処理された使用済み水を膜に通過させ、固形物質、コロイド粒子、病原菌、ウィルス、原虫嚢子を膜表面に付着させることで除去する。膜を通過した水には溶存塩と有機分子しか残らない。
- NEWater生成プロセスの第ニ段階は、半透膜を使用した逆浸透(RO)である。半透膜には極小の穴が開いており、水分子等の非常に小さな分子のみを透過させる。その結果、バクテリア、ウィルス、固形物質、硝酸エステル、塩化物、硫酸塩、消毒副生成物、芳香族炭化水素、殺虫剤等の不要な汚染物質は膜を透過できない。つまり、逆浸透水であるNEWaterにはウィルスやバクテリアが一切含まれず、塩分や有機物質もごく少量しか含まれない。
- この段階で再生水は既に非常に高い水質を実現しているが、第三段階にて、逆浸透の安全性を徹底する処理が施される。赤外線(UV)消毒処理により、全有機体を不活性化して水の純度を保証する。
さらにアルカリ化学物質を追加して、PH及び酸塩基平衡を維持した後、幅広い分野に適用可能なNEWaterの供給準備が整う。
逆浸透は、高い認知度を誇る確立された技術で、ボトル入り飲料水の製造、ウエハー製造や電子産業用の超純水の生産等の多様な分野にて広範に利用されている。さらに、飲用の海水淡水化に使用する技術としても高い人気を上げており、スペースシャトルや国際宇宙ステーションにて使用済み水を飲料水用に再利用する技術としても活用されている。
■ 実績・効果
- 超純水であるNEWaterは、ウエハー製造等の工業用途に適している。NEWaterは、ウエハー製造や電子機器及び電力発電といった業界の製造工程に活用され、エアコン冷却用として産業及び機関施設においても使用されている。このため、世帯に供給可能な飲料水の節約につながる。
NEWaterデモンストレーション・プラント・プロジェクトとその卓越した精密ろ過技術に対する貢献が認められ、PUBは米国の国立水研究機関(NWRI)より「アワード・オブ・エクセレンス」を受賞している。この賞は、2002年5月4日に米国カリフォルニア州のコスタメサで開催されたマイクロフィルトレーションⅢ会議にてPUBに授与された。
- PUBは、「グローバル・ウォーター・アワード2008」式典にて、「エンバイロメンタル・コントリビューション・オブ・ザ・イヤー」も受賞している。
同賞は、環境フットプリントの抑制を可能にする水施設又は廃水施設の能力を最大限に反映させるプロジェクト、プロセス、機構によって水処理産業を牽引した貢献を称える賞である。
これらの名誉ある国際的な賞の受賞は、NEWaterが有望且つ持続可能な水資源であることを実証している。NEWaterに関して、グローバル・ウォーター・インテリジェンスは、シンガポールが再生水導入において世界のリーダー的存在であり、NEWater 戦略は飲料水用の水再利用の導入を検討する全ての水処理機関が活用できる雛型を創造した、と述べている。
■ 経費
■ 本件問合先
- シンガポール公益事業庁
経営企画部
Corporate Development Department, PUB, Singapore
(電話) +65 62358888 または +65 67313715
(メールアドレス)pubone@singnet.com.sg または sio_wei_hurng@pub.gov.sg