「ユニークなアプローチで国際協調を促進する、ANMC21」
-ANMC21やシンガポールで開催されたANMC21第11回総会の印象は?
シンガポール国際水週間 シンガポール大学のブースの前で
最初にANMC21の素晴らしい取組を知ったのは、2008年、私がアジア人材育成基金に応募したときです。その後、アジア人材バンクに登録し、アジア通信3号(2008年)、17号(2011年)で取り上げていただき、2009年9月には、東京で開催された第7回アジア危機管理会議に出席しました。そして今日、メンバー都市の代表者が「都市の経済成長と環境政策等の両立」のテーマで意見交換を行う、第11回シンガポール総会に参加することができ、とてもうれしく思っています。
都市開発を続けるためには、都市同士が知識を共有し経験を分かち合う必要があります。特に地域内での協力が必須です。私がANMC21に関心を持つ理由は、その持続可能な未来という目標だけでなく、国際協調を促進するユニークなアプローチにあります。ANMC21は専門家と政策立案者の両方を巻き込んで都市レベルでの共通課題に取り組んでいます。そうすることでANMC21は専門家と政策立案者に間の隔たりを埋め、学問と現場の食い違いを解消することができます。その良い例が今日の総会です。メンバー都市の代表者たちが科学者と管理者の両方の目から見た意見を交換することができました。
「水問題を解決し、住みやすく、持続可能な都市にするための活動」
-ブイさんの職場と現在取り組まれている研究について聞かせてください。
このページのコンテンツには、Adobe Flash Player の最新バージョンが必要です。

自らが参加しているプロジェクトの説明をしてくれるブイさん
首都大学東京を卒業した後、幸いにもシンガポール国立大学(NUS)で「シンガポール・デルフト・ウォーター・アライアンス(SDWA)」に入ることができました。約20か国から来たやる気に満ち優秀な研究者やスタッフ100名近くと、親しく仕事ができる職場です。NUSは世界をリードするグローバル大学のひとつに数えられています。また、NUSとシンガポールの公共事業庁(PUB)、オランダの研究機関デルタレス(Delteres)が共同で参加するSDWAは、水に関連する知識を高めるための学際的かつ国際的なリサーチセンターです。NUSとDeltaresの協力関係はNUSDeltaresと呼ばれる新しいアライアンスでさらに強化され、東南アジアにおける研究と専門家によるコンサルタントサービスをリードする存在となっています。SDWAとNUSDeltaresが行う研究の影響力は大きく、その対象範囲は政策分析、水情報学、水文学、形態力学、水質と生態学など広範囲にわたります。
気候変動と都市化がいま最重要課題であることは間違いなく、将来に向けて、都市は新技術と持続可能な解決策を必要としています。私の現在の研究の関心事は、主に都市の水文学と雨水管理です。チームメンバーとともに、水問題を解決し、住みやすく持続可能な都市をシンガポール、東南アジア、そしてそれ以外の国々で実現するために活動しています。
「東京での研究、それは私のものの見方を変えた」
-首都大学東京で学んだことはあなたの研究の見方にどのような影響を与えていますか。また、アジアの協調、特にシンガポールと東京とハノイの協調を促進するために、現在どのような取り組みをしていますか。
このページのコンテンツには、Adobe Flash Player の最新バージョンが必要です。

ハノイ大学との研究発表会 シンガポール大学にて
(少し考えてから)首都大学東京の河村明教授の下で学んだ3年間は本当に充実していました。私の研究に対する見方や世界観が大きな影響を受けたことは間違いありません。世界各地の特に都市部がさまざまな水問題を抱えており、その新しい解決策を見つけるための研究に対する需要は大きく、また高まってきていることに気づかされました。また、チームで仕事をすることや細部に気を配ることが非常に重要であると実感しました。今の仕事は技術的な課題に焦点がありますが、それに加えてプロジェクト開発、提案書の作成、顧客との直接対応などの面での大きな努力を必要とします。ですから東京での生活で得た総合的なスキルと経験がとても役立っています。
シンガポールに移ってからも、アジア、特にシンガポール、東京、ハノイの友人との協力関係を強め、共同作業を進める努力を続けています。例えば、都市の地下水源に関する私の修士論文の出版に向けて、首都大学東京の河村教授と連絡を取り合っています。今年、首都大学東京の西郡仁朗教授のビジネス関係の学生がシンガポールのグローバルビジネスハブを視察したときも、その準備とお迎えのお手伝いをしました。遠く離れた海外の友人や仲間とも密に連絡をとりあっています。特にアジア人材育成基金関連の友人達です。さらに、東京とシンガポールの仲間とハノイの仲間の橋渡しをしようとしています。情報交換や新たな協同研究のチャンスを探るための会議や勉強会をいくつか開催し、ハノイ出身の博士課程への学生を都市の地下水源という課題での研究を継続するために河村教授の研究室に紹介しました。
「アジアはいま、その持続可能性が気候変動の脅威にさらされている」
−アジアの持続可能性のために、どんなビジョンを持ち、どんな役割を果たしたいとお考えですか?
多くの事実から明らかなように、気候変動は21世紀最大の課題です。世界の環境、経済、そして社会的な安定に対する深刻な脅威です。特にアジアの都市はその大半が海に面する低地に位置しているため、気候の変化と海面の上昇の影響を受けやすい。一方で、アジアはいま経済的にも戦略的にも国際社会の一員です。私自身、その一員であることを誇りに思っています。積極的な役割を果たして、アジアの繁栄と持続可能性を確実なものとしていきたいです。都市の水問題の解決に向けて取り組み、国際協調を促進するための仕事を続けることで、東南アジア、そしてそれ以外の地域の持続可能な発展に貢献したいと思います。
このページのコンテンツには、Adobe Flash Player の最新バージョンが必要です。

プラスティックの排水用モジュールを利用した屋上緑化システム
例えば今日、ハノイの派遣団とは、最近提案された「VACI- Vuon-Ao-Chuong Infrastructures」というモデルをハノイの都市計画に織り込むことで、ハノイを住みやすく気候変動に強い都市にすることができないかという話をしました。VACIの基本的な考え方は、貧しい家族が農村地域で自立して生活を維持できるようにするためのベトナム固有の知識、伝統的な習慣に基づいています。VACとはもともと庭、池、家畜を意味する言葉で、家族の日々の生活に絶対必要な食料と水を提供してくれるものです。しかし、都市という側面からこの言葉を捉えると、新たな意味合いを持ちます。Green‐Water‐Biodiversity(緑、水,生物学的多様性)、つまり住みやすく、持続可能な都市づくりに必要な要素です。
ANMC21の第12回総会が来年ハノイで開催されると聞いて、とてもうれしく思います。ハノイの仲間と協力してハノイに役立ちANMC21の主旨に合うような共同事業を立ち上げて、その成果を2013年の総会で発表できればいいなと思っています。
|